機械仕掛けの恋。
4
「なっ…にすんだよ!」
「何を怒っているんだ?唇の端にクリームがついてたからとっただけだ」
「やり方が問題なんだって!」
「やり方?舌で舐めとる方が指よりも効率がいい。だから実行したまでだ…全く問題ない」
要の言うことが分かっているのか、それとも分かっていて敢えて分からない振りをしているのか、ユアンはしれっと言う。
「とにかく!今度からするなよ絶対だからな」
「…時と場合による」
「どんな場合だよッ!」
「例えば…お前を抱き締めたくなった時、だな」
低音の声が囁くように「そうしてここを貪り尽くすのも面白いかもしれないな」言って耳の鼓膜を揺さぶり、親指の腹が要の唇をやんわりと擦った。
一瞬にして空気がひどく淫靡なものに変わる。
性的なことに慣れていない要はユアンのされるがままで、指一本動かせない。もし動いていたなら蹴りの一つでも見舞っていたとこだろう。
「なんて顔をしている。本当にされるとでも思ったか?こんなのはただの言葉遊びだ。お前がこのままして欲しいなら別だが…その時は嫌って程よがらせてやる」
「最悪なアンドロイドだな!」
腕を振りほどき、睨むようにユアンを見上げる。整った顔は無表情で覆われており、何を考えているのか要には分からない。
そもそもアンドロイドに人間的表情なんてものもないのだが。
全て作り物だ。
全て人間が設定した物なんだ。
「ならば…棄てるか?」
今までで一番無機質な声音だった。そうしてユアンの言葉に頭が真っ白になる。
感情のこもらない声は、なんて冷たいのだろう。まるで刃だ。
なんだろう、ユアンがどうしてこんなことを言うのか分からない。でもこれだけは要にも分かっていた。
「ユアンは馬鹿だ!大馬鹿だ!」
[*BACK][NEXT#]
無料HPエムペ!