機械仕掛けの恋。
3
それから要は素っ裸だかのままでいるユアンにTシャツとジーンズを見繕って渡した。
しかし要が持ち合わせている服の中で一番大きいサイズを渡したにも関わらず、やはりユアンが着るとどうにも袖が短い。
そもそも体格が大きいのだからそれも当たり前なのだが。なんだかそれが悔しい。
だから「んー…ユアンの服、買ってこなくちゃいけないな」とユアンの方を見ないまま要はあまり考えずにそう言った。
わざわざコンプレックスを刺激したくなんかない。
それに対し、ユアンは要に視線を向けるだけで特に何も言わず、部屋の中に視線を向けている。
何が置いてあるのか覚えようとしているのだろうか。
どういう経緯であれ新しい同居人が出来た。
アンドロイドらしからぬユアンとのこれからの生活にわくわくしつつ、要はレストラン"風見鶏"の店長からもらったケーキにパクついた。
帰ってきて冷蔵庫に入れないままだったけれど大丈夫だろう。口に入れれば、甘いケーキの味に顔が綻ぶ。
美味しさのあまりニコニコとしている要に対し、ユアンは眉間にしわを寄せていた。なかなかそんな顔も格好良いという。
ゆっくりと近付いてくるユアンに「甘いものは嫌い?」そう聞こうとした。
でも出来なかった。
唇の端に濡れた感触がしたかと思うと、ユアンが意地悪く笑って「お前は子供か?…甘すぎるな」と舌で舐めとったケーキのクリームの味に顔をしかめる。
濡れた感触。
あれはユアンの舌だったのか?!とワンテンポ遅れて意識した瞬間、要の顔はリンゴのように真っ赤になってしまった。
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