機械仕掛けの恋。
2
『かなめは見る度に大きくなっているな』
『ええ。最近では、我が儘も言ったりしますわ』
『他愛ない我が儘だけれどね。今から成長が楽しみなんです』
グッドマンの言葉に母デュナはクスクスと笑い、父オーレンは目を細めて我が子の将来を語る。
職業柄いつもかなめと一緒にいることの出来ない二人は、ただ健やかに育っていってくれればといつも考えていた。
それが如何に難しいことなのか分かってはいても、それを願わずにはいられなかったのだ。
『コレが君達の研究成果か?』
『はい。基礎原理パーツ等は博士の立ち上げた例の7体を参考にしてあります』
グッドマンがガラスケースに入れられたアンドロイドを見ている隣で、オーレンが淡々と答える。
『コレにも入れたのか――?』
『はい』
『成功すると思うか?』
『私は博士同様、アンドロイドにも人間と同じように心が生まれると信じています。それが例え世間から中傷されるようなことだとしても…』
要が閉じた目を開けた頃には頭に響いていた声は聞こえなくなっていた。
一体なんだというのか。
見覚えのない記憶の声にただ困惑するしかなかった。
あれは誰なんだろうか?と考えると心臓のあたりがやけにバクバクと音を立てた。
「ユアン…」
ひとまず頭の中に響いてきた声のことは置いておいて、改めて要はその名前を言ってみた。
それは無意識に出てきた名前にも関わらず、不思議としっくりとアンドロイドに馴染んでいた。
ユアン、ユアン、ユアン。
うん。ユアンって名前にしよう!
要はすくっと立ち上がり、アンドロイドならぬユアンに向き合った。
「今日から君はユアンだよ!」
「ユアン…か。不思議なものだな」
「ん、何か言った?もしかして気にいらなかったとか?」
「違う。お前の好きなように呼べばいいと言っただけだ」
「じゃあユアン、ユアン、ユアン」
無表情なユアンをからかうように要は何回もユアンの名前を呼んだ。何故だろうユアンと言えるのがとても嬉しかった。
いつまでも名前を連呼し続ける要にユアンはジロリと睨んで「俺は犬や猫じゃない」と言ってから要の額を指で弾いた。
それはなかなかに痛かった…。
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