機械仕掛けの恋。
1
所狭しと並べられたコンピューターと機械装置の山から聞こえる電子音。
忙しなく動く人間の気配。
身体にまとわりつく液体と無数のコードの山と束。
コードに繋がれた先にあるのはアンドロイドで、薄青い液体の中に入っていた。
裂かれた皮膚の下には冷たい機械がおさまっていた。
それから―――。
ゆっくりと瞼を開いた先、そのガラス越しに小さな小さな子供がいた。
『父さん!母さん!この人、目を覚ましたよーッ』
子供特有の高い声。
こちらをまた振り向いた子供はガラスにぺたっと小さな手を置いて、満面の笑みで『はじめまして』と言った。『誰だ…?』そう返そうとしたら喉が張り付いたように声が出なかった。
かわりに、ゴポコポと籠った音が響く。
『僕はね!君の友達なんだよ』
『かなめ、静かになさい』
『むぅう…母さんはいつもそればっかり』
母親の言葉に小さな子供はムスッとそっぽを向いたが、いつものことでそれも長くは続かなかった。
そっぽを向いた先には父親とそれから、
『父さん。それにグッドマンおじちゃん!どうしたの?今日は来れないって聞いたよぉ』
駆け寄るようにマンと呼ばれる壮年の男のもとに行き、下から見上げるように言った。そんなかなめに壮年の男は目を細める。
『ふふふ。今日、予定していた仕事がなくなったんだ。それならオーレンとデュナの研究でも見るかなと此処に来たわけだよ。それに、かなめにも会いたかったからね』
『そうだったんだぁ。僕もグッドマンおじちゃんに会えて嬉しい!うきゃーーッ』
ニコニコと笑うかなめの頭を大きな手で撫でながら、グッドマンはガラスケースの中身に目を向けた。
そこには一体のアンドロイドが無数のコードに繋がれ、ぼんやりと硝子玉の瞳を開けていた。
焦点は合っていない。
『かなめ。少しだけ向こうで遊んでいてくれるかな?』
父親オーレンの言葉にかなめは『うん!』と返事をして、ガラス越しにアンドロイドに手を振ってから、ぱたぱたといつもの部屋に向かった。
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