機械仕掛けの恋。
4
人の手に渡る前にはどのアンドロイドも必ず、製造番号と名前を付けられることになっている。
これはアンドロイドを造る時に決めた最初の決まり事だった。
6桁の数字と7文字のアルファベットの計13字の製造番号、その数字の下にはアンドロイドの個体名―名前―が刻まれるのだ。
これは人間がアンドロイドを管理しやすくするために出来たものである。
アンドロイド情報はアンドロイド研究施設メインコンピューターに送られ其処で全て管理、保管、処理されている。
また人の手で造られたアンドロイドが何らかのバグにより、暴走することもないわけじゃない。
もし暴走した場合は、製造番号と名前からそのアンドロイドを割り出し、速やかに緊急停止装置を作動させるのもメインコンピューターの仕事だった。
だから、製造番号も名前もアンドロイドには無くてはならないものなのだ。
「右腕にも、やっぱないなぁ」
「何をしているんだ?さっきから」
「何って製造番号と名前探してるんだよ。アンドロイドには必ずついてるもんなんだぜ?」
「ああ俺にそんなもの元からついてないが」
「――えっ?!!」
今さらっとすごいこと言わなかっただろうか。
ないって、ついてないって言ったような気がする。
「え…さっき、ない、って言った?」
「ああ」
どうやら要の聞き間違い、ということではないらしい。だがここは聞き間違いであってほしかった。
淡々と答えるアンドロイドに要は驚きを隠せず、目を見開いた。
「な、なんで…?!」
「知らん」
「知らんって、其処はすごい重要な部分だろッ!!」
すると、だからなんだ、とでも言いたげな目で睨まれた。やはりアンドロイドらしくないアンドロイドである。
要には何を考えているのか全く理解出来なくなっていた。
でも製造番号がないなら名前もないということなんだろうか。
さすがにそれはないだろう。
「名前はあるだろ?これくら覚えてるでしょ。うん」
「ないな」
ああ…そうですか。
アンドロイドの答えに要はもうどうしていいか分からない。
こんなアンドロイドは今まで見たことがなかったし、どう扱えばいいというのだろう。ほとほと困った要は何気なく目を向けた先、アンドロイドの首についているものに気付いた。
「それ、なんだ?」
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