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機械仕掛けの恋。



「つか、お前はいつ離れんだよッ!」

 なかなか離さないアンドロイドの腕の中で、もがくように暴れると今度は思いのほかあっさりと腕を離してくれた。

 一体、なんだというのか。

 しかし要にアンドロイドの考えていることが分かるわけがない。
 兎に角、腕の拘束がなくなり、やっとこ起き上がった要はんーっと軽く伸びをする。
 バイトから帰ってそのまま寝てしまったせいか、服はしわくちゃになっていた。

 しわくちゃの服から携帯を取り出す。画面を開くと着信3件、Eメール5件と表示されていた。いずれも送り主は斎である。
 無断で休むことなどない要が学校に来ないから、心配しているのかもしれない。

 ポチポチとボタンを押して斎に、


― 今日は休む。明日、ノート写させてくれ ―


 と書いて送った。
 すると一分も経たない内に返信がきた。いつものことながら返信が早い。


 ― 了解。 ―


 それを見て要はとりあえず授業のことは大丈夫だなと携帯を閉じ、部屋にいるアンドロイドに目を向けた。

 少し話しただけだが、このアンドロイドはとてもアンドロイドらしくなかった。
 まるで自分で考えて動く人間みたいなのだ。そんなことあるわけがないというのに―――。


 やがてじっと要が見ていることに気付いたのか、アンドロイドと視線がかち合う。
 綺麗な硝子玉の蒼い瞳が光っている。

「なんだ?」
「あ?ああなんで棄てられてたのかなって思って…ははは」
「理由など知らない」

 はい―――?今このアンドロイドはなんて言ったのだろうか。理由を知らないってどういうことだろう。
 さすがに理由もなくゴミ捨て場にアンドロイドが居るわけがない。今でこそ家庭に一体アンドロイドが当たり前であっても、アンドロイド自体はすごく貴重なのだ。

「知らない…って」
「気付いたらあそこに居て目の前にお前が居た。覚えているのはそれだけだ」

 淡々と言うアンドロイドは本当に分からないようだ。
 だとすると記憶メモリーが削除されているのかもしれない。削除されているなら何も分からないのも頷ける……そういえば!

「製造番号と名前くらいはあるんだろ?左腕、見せてよ」
「?」

 何も言わないアンドロイドを横目に要は、布切れに隠れている左腕を手にとった。

 その場所は要がゴミ捨て場にいる時に確認した所だ。あの時は、暗くてよく見えなかったせいかと思っていた。
 しかし明かりのある下で見たアンドロイドの左腕には、やはり何も記されていなかった。

 右腕も同様に何もない。

「なんで、なんでないんだ?」



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あきゅろす。
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