機械仕掛けの恋。
5
一体何が置いてあるのかと思い、何とはなしに近寄って見た要は次の瞬間、思い切り目を見開いた。
(うそ…ぇええ人間ッ?!!!)
あり得ない…。
そしてまさか人間がゴミ捨て場にいるとは思わなかった要は、びっくりして数分その場に固まってしまっていた。
しかし固まってばかりもいられない。
なんとか落ち着きを取り戻した要は手を伸ばし、人間に触れてみる。
よもや死体だったならば、警察に通報せねばならないだろう。
恐る恐る触れてみた指先から伝わる体温は冷たく、やはりピクリとも動かない。
しかも見たところ布一枚しか身に付けていないようだ。布からはみ出たすらりとした足や布の隙間から見える肌…首に何か付けている以外、どうやら真っ裸らしい。
顔は暗くて見えづらい。
兎に角、女の子じゃなくて良かった、などと要は場違いな事を思った。
そして要はここに至って疑問を持ったのだ。
(人間にしては…。んぅ…もしかしてアンドロイド…とか?)
それこそあり得ない。
もしアンドロイドを棄てる場合、それ相応の施設に行き、そこで廃棄しなければならないのだから。
ゴミ捨て場に棄てるなど言語道断。
とはいえ、確かめなければどうしようもないのも事実で―――。
アンドロイドは傍目から見ても人間とそう大差はなく、人間にとても近い造りになっていた。
しかし幾ら人間に近いとはいってもアンドロイドで有るか否かは、二の腕に刻まれた製造番号で分かるようになっている。
それは6桁の数字とアルファベット7文字の計13字から連なる。
また製造番号の下には、アンドロイドの名前も刻まれていた。
バイト先のユウとランも左の二の腕に、製造番号と名前があり要はそれを二人から見せてもらったことがある。
だから当然これにもあるだろうと思って触れてみたのだ。
でもそこは要の予想に反してさらりとしていた。
そんな筈はない、もしかしたら周りが暗くて見えづらいのかもしれないと思った要は、よくよく目を凝らして二の腕を再度確認。
やはり、なにもない。
反対側の右腕かと思い、そちらを確認しようと要が右腕をとろうとした時、逆に要の手首に手が掛かった―――。
(は…?)
此処には要以外に居ない筈だ。
だとすると誰の手だ?
いやまさか…まさかなと要は思いつつ視線を前方に向けた。
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