機械仕掛けの恋。
4
学校も終わると要は急いで帰り支度を終え、教室を飛び出すように走る。
これから要はバイトだった。
週四で働いているレストラン"風見鶏"はなかなかに盛況でいつも忙しかった。要の他にもバイトが6人いて、そのうち4人はアンドロイドだった。
今日も客の入りは上々で、ホール担当の要は休む暇もなく、店内をくるくると立ち回る。
時折、要に「美味しかったわ」とか「ありがとう」と声を掛けてくれる客に笑顔で応える。疲れていてもその一言で疲れもふっ飛ぶというものだ。
要がようやく息をつける頃には外は真っ暗になっていた。
「お疲れ。要!」
声を掛けてきたのは同年で同じバイト仲間の羽柴 基(はしば もとい)だった。
「基こそお疲れさん。ってあれ…今日のシフトって鳴海さんじゃなかったっけ?」
「鳴海さんは今日、彼女とデートらしいよ。昨日シフト変わってくれって頼まれたから」
「この前の女の子?」
「なわけないじゃん。新しい子だよ」
この場にいない鳴海 圭吾(なるみ けいご)は女癖は悪かったが、それ以外では頼れる人物だった。
要と基が賑やかに話していると風見鶏の店長、丸井が「あがっていいよ」と声を掛けてきた。
それから残り物のケーキを要と基に手渡すと事務所に戻って行った。
ホールではまだアンドロイドのユウとランが後片付けをしていた。
要はユウとランに「お疲れ様」と声を掛ける。
二人ともそれに手を止めて要に挨拶をするとまた後片付けを始めた。
裏口から基と連れ立って出て、レストラン前で別れると要は家路を歩き出す。
日付けも変わっているため、早く帰って風呂に入らないとまた朝寝坊してしまう。
店長からもらったケーキは冷蔵庫に入れて明日食べればいい。
ちょうどバイトは休みになっていたし、学校から帰ってゆっくり食べるのもいいだろう。
16歳になっても甘い物が好きだなんてみっともないかもしれないけれど、要は甘い物が大好きなのだ。これは譲れない。
そう思ったら早く家に帰らないといけない。自然足取りは小走りになる。
もちろんケーキが崩れない程度にだが―――
家にそろそろ着こうという時、要はゴミ箱の前に置いてある物に目を止めた。
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