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機械仕掛けの恋。



 ガヤガヤと賑わう周りの音に要が気付いた時、既に午前の授業は終わり昼休みになっていた。

「えぇえええ?!!」

 大きな声でガタンと立ち上がる要にクラス中の視線が集まるが、そんなものを気にしている場合ではなかった。
 要は昼御飯を持ってきていなかったのだ。朝の段階で学校にある購買でパンを買えばいいと思っていたのが甘かった。

 今から買いに行っても売り切ればかり…ガックリとまた机に突っ伏していると頭上からぼとぼとと何か落ちてくる。

 なんだ?と落ちたものを見ればパンが!パンがあるではないか!!

「おいおい…てめえはどっかのハイエナかなんかか?」

 声のした方を見ると、要の親友である吾妻 斎(あがつま いつき)の姿があった。

「えっ?斎これなにまさか俺に買ってきてくれたの?」
「そうだぜぇハイエナ君。多分、なんも用意してないと思ってなーほらこれも奢りだ」

 そう言って斎は要にイチゴミルクを手渡す。斎の優しさに感謝しつつパン3個とイチゴミルクを一気に胃に入れる要なのだった。

「バイト減らしゃあいいのにって言っても無駄だよなぁ」
「あ?はぁんかいっあ?」
「食うか話すかどっちかにしろって」

 それもそうかと要は口に入れたものを飲み込んで、イチゴミルクを片手に斎を見た。

「結構儲かるから辞められないんだよ。それにバイトするの嫌いじゃないし」
「そう言うだろうとは思ったけど倒れないようにしろよ」
「分かってるって!」

 飲み終えたイチゴミルクを片手でぐしゃりと潰しながら、ニッコリと要は言うが、斎にしてみれば本当に分かっているのか聞きたいくらいだった。

 斎は要のことを親友以上だと思っている。けれど、要は斎のことを親友だと思っている筈だ。斎はそんな要に好きだなんだと言うつもりはなかった。
 今の関係を壊したくないからだ。

「あっ!もう昼休み終わりじゃん!俺、ほとんど寝て終わった…」
「あぁ自業自得だろ?」
「斎ひどい…もうちょっとオブラートに包んでさぁ」
「なに言ってんだかねぇ。俺様、要にはいつも優しいと思うけど」

 要は斎の言葉に反論出来ず、確かに考えてみるとよくパンを奢ってくれているとは思ったが、それを今この状況で言いたくなんかない。第一、ニヤニヤしながら見ている斎も気に入らないのだ。

 となると要に出来ることといえば睨むことくらいだった。
 それもあまり意味はなかった。



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