進んだ先には




名前を呼ぶ声がした。

俺の名前を呼ぶ声。


声に引き寄せられるように俺は暗闇に沈んでいく。

怖くなんてない。

強がりじゃない。

この声に導かれるのなら俺はどこへだって行ける。

だってこの声が俺を呼んでいるから。





んだには






「あべくん、」


この声を聞いてると心が落ち着いて、他に何もいらなくなる。



「どおした、三橋」
「ぁ、お、はよう」
「おはよう」


自然と顔が綻ぶ。三橋の声にはどこか人を安堵させる力があるように思える。いや、人の感情を引き込む力があるのだろうか。
お前がいま穏やかでいるのなら俺も空を見上げる余裕を持つことができる。

背中にあたるフェンスが音を立て、俺の横に座る三橋が音を発する。


「あべくんは、そらがすき、だね」
「ああ」


すきだよ、と続けながら首をひねって三橋を見やる。三橋も俺の方を向いて笑った。


「おれもすきだ、よ」


三橋に笑顔で返してまた空を見上げる。
あの青の先にはなにがあるんだろうなんて、出すつもりのない答えを探すフリをしながらゆったりと過ぎていく時と、それと、三橋を感じる。

三橋のいるこの空気を体いっぱいに吸い込んで俺はゆっくり立ち上がった。


「行こうか」
「うん」


遠くで鳥が鳴いた。

青の先にもきっと青が続いているんだろうなんて、そんな曖昧な答えに納得しながら俺はまた、空を見上げた。





「あべくん、といると、あんしん、する」

「そ?ありがと」



2008/9/13
瑞稀.



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