短編
探し物(越前リョーマ×竜崎桜乃)
「何やってんの」
昼休み。
中庭のベンチでうとうとしていると、見慣れた長い三つ編みが目の前に現れた。
最初はぼんやりと眺めてたけど、何か一生懸命になって花壇で物を探しているみたいだったから、気になって声をかけた。
「り、リョーマくん…何でもないの!」
両手を土で泥々に汚して、どう見ても何でもなくないと思うんだけど。
「俺には内緒なんだ?」
「う…」
俺は最近おかしい。
別に、竜崎が言いたくないなら言わなくて良いじゃんって今までなら思えてた。
なのに最近は、竜崎の全部を知りたいと思ってる。
全然俺らしくない。
「あのね、リョーマくんとお揃いのキーホルダー、落としちゃったの」
ぽろぽろ泣きながらそう言う竜崎。
この前一緒に出かけたときに買ったキーホルダー。
何でも良かった。ただ竜崎と同じ物を持っていたかっただけ。
「そんなこと、気にしなくて良いよ」
「でも…」
竜崎の涙を手で拭って、頭を撫でた。
「俺も探してあげるから」
「ありがとうっ」
「って、また泣いてるし」
昼休みが終わるギリギリで、キーホルダーが見つかった。
「あった」
「ほ、ほんとだ!ありがとうリョーマくん!」
嬉しそうに笑う竜崎が本当に可愛い。
泣き顔も、困った顔も全部可愛いんだけど。
「…可愛い」
「え?!」
竜崎が真っ赤になってる。
俺も、言ってしまってから気づいた。
「…教室、戻るよ」
赤くなった自分の顔を見せないように、竜崎に背中を向けて歩き出す。
「あ…待って、リョーマくん!」
後ろから竜崎が小走りで追いかけてくる。
やっぱり、俺は竜崎と一緒にいるとおかしくなる。
これが恋ってやつ?
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