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我が敵に捧ぐ鎮魂歌
子どもらしさに絆される

あの後、騒ぎが収まるまで、山の動植物になりきって気配を消して逃げ切ることに成功した。
人間、必要に迫られるとなんでもできるというのは本当らしい。
もうこの山は庭のようなもの…食物連鎖の頂点は私である。

結局、山から出ることはできなかったが、山を通る商人と、獣の毛皮や肉、薬になる植物や内臓を交渉材料として取引し、人間として生活するために必要なものを揃えることができた。
幸い出会った商人たちは聡明で良心的な者が多く、この世界の基本知識や物の相場を教えてくれる。
次にこの山を通るときは、書物をいくつか用意してくれる約束も、した。
アチラへ帰る手がかりとしたいものだ。

しかし、とにもかくにも、まずは生きねばならない。

コチラへ来てからひと月も経ていないはずだが、すでに秋も終わりかけ、冬の気配がする。
どの程度の厳しさかはわからないが、備えておくにこしたことはない。
とりあえず猪を狩って、血抜きをしようと、久々に河原に出た、

ら、

見覚えのある少年二人。
絵面的にも
「アッ、これ少年ジ●ンプで見たところだ!」
という感じだ。

どうしよう。

挨拶でもすべきだろうか。
でも、最後会った時頭突きで気絶させてしまったからな…マダラ少年も複雑な顔をしているし…他の場所を探そうかな…

微妙な空気を打破したのは意外にも、というかやはりというか、もう一人の少年―――…柱間少年であった。


「おっ!噂をすれば影、というやつかの!?ナア、マダラ!もしかして今話していた…
なーんつって!!!」


警戒を解いて、実に朗らかに笑いながらバシバシとマダラ少年の背を叩く。
凄い少年だ。
私だったら、藪から突然猪背負った女が現れたら泣き叫んで逃げる。
背を叩かれてハッとしたマダラ少年は、未だ叩き続ける柱間少年を振り払う。


「いてぇよ…まあ、そうなんだけどよ…何なんだよアンタ、その猪…山に馴染みすぎだろ…」

「えっ、ああ…血抜きして、解体しようと思って…でも、場所を変えようかな…お友達と一緒のところを邪魔したね?」


とりあえず、御尊父に報告をされても嫌なので、報告される内容もないうちに場を立ち去ろうと踵を返した。

しかし、回れ右した正面に、ニコッと笑う柱間少年が居る。

えっ、怖い…


「まあ待ってくれ、俺はもうちょい、アンタと話がしたい!いや、正直マダラの作り話だと思っとった!」

「てめぇ…」

「ふんふん…なるほどなるほど…」


ギリィ…と歯噛みするマダラ少年を顧みもせず、私の周りをぐるぐる回って観察する。
なんだろう…アチラにいた頃のマダラさんとはまた違う、得体のしれない怖さが柱間少年には、ある。

………うちはだけではなく千手にまで追われるようになったら、どうしよう。

しばらくすると柱間少年はぐるぐる回るのをやめて、再び正面に立ちこちらをまっすぐ見上げた。


「いやいや!これは、マダラが化かされるのも納得の美人だの!」



子どもらしさに


「………よ、良くできた子だなあ。アケビをあげよう」

「わーい!」



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