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我が敵に捧ぐ鎮魂歌
それは背水

山を下りるための道は一つではないので、他の道も試してみたが、結局下山は叶わぬままだ。
個人的に、塞の神に原因があると考えたので、そこを避けていくことを提案すると、マダラ少年にはとてつもなく胡散臭いモノを見るような目でみられた。


「君、私のことをモノノケの類か何かだと思っているでしょう。悪いモノだから塞の神を避けようとしているのだとか思っているでしょう。」

「………。」


否定をしない…
現に、塞の神手前で私を置いて、彼だけ進むと元の場に戻ることなくふつうに進むことができるのだから、原因は、私にあるのでしょうけれども。

でもね、こんな訳のわからない縛りをしたのは、未来のお前だぞ。

まあ、今の彼にそんなことを言ったところで
「しったこっちゃねー!」
だろうし、致し方のないことだ。
それに、胡散臭い存在であるにも関わらず、なんだかんだで付き合ってくれているのだから、優しい子ではないか。

もう日も暮れるというのに。


「君、」


塞の神を挟んで、目を歩くマダラ少年に声をかける。


「今日はもう帰りなさい。日も落ちる。送ってやることも出来ない身です。これ以上は親御さんにも申し訳ない。
ありがとう」

「あんた、どうするんだ」

「やむを得ません。熊棚でも探して一晩お借りしましょう」


とはいえ着の身着のままでの山入りは久々なので、とても不安…今はなんとか過ごせても、明け方は冷えることだろう………しかし、ここでその様を彼に見せるわけにはいかない。
いくら野郎が憎くとも、彼は未だ、子どもだ。
子どもにこれ以上面倒をかけるわけにはいかない。
熊棚野宿という軽口で大人の余裕をみせたつもりであったのだが、人外の疑いがある輩が言ってよい冗談ではなかったようで、ドン引きしている御様子。


「………冗談ですよ」

「ふぅん…なんだ、つまりもう満足したってことかよ?」

「満足?」


意味が解らず首を傾げると、マダラ少年は指を嘗め、眉を濡らしてみせた。
狐に化かされるときのまじないである。


「ば、化かしていたわけじゃあありませんよ!」

「わかってるよ」


ふ、と頬を緩めて笑う顔が妙に大人びていて、思わず後ずさりしてしまう。
この年でこの色気。
恐ろしい子………将来が心配だ。

そんなこちらの不安をよそに、彼は彼なりに今後の方針を話し出す。


「正直、俺だけの力じゃあどうにもならねぇしな。一度帰るわ。でも、こんな胡散臭ぇ怪しい奴を山に野放しにしておくわけにもいかねぇからなァ…

親父に相談してくるわ」

「えっ!?」


それは背水



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あきゅろす。
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