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我が敵に捧ぐ鎮魂歌
愛しあぐねている

久々に会いまみえたマダラさんは少年から青年への階段を順調に駆け上っている最中であった。
記憶上にある愛らしい子どもの様相はスルリと溶け、髪が少し伸び、眼球周りの表情筋が使い込まれていることがわかる。
つまるところ、アチラでの野郎を彷彿とさせる要素、色濃く……
一瞬緊張で筋肉が硬直する。
その緊張を彼が見逃すはずもない。
何を曲解したのか、私を立たせるために伸ばした手をゆっくりと引っ込めて距離を置き、傷ついた心を押し殺した顔をする。


「あんた、まだこの山に居たのか。別にあんたを殺しやしねぇよ……触りもしねえ」


ウッ、見た目はアレだが、所詮はまだ十代…!しかもうちは…!
一番繊細なお年頃である。早急にフォローする必要がある。


『いや、そうではなくて、』


即座に立ち上がり傍に寄る。


『大きくなったな、と、……大きくなっていたから驚いてしまったのよ……』


傍に寄って気づいたが、身長もすでに抜かれている。
あと数年、いや、年々熟成して精神的脅威となっていくことだろう。
能力ではない。私はいま、外見の話をしている。
しかし子ども。
20歳までは子ども。
もしかしたら20越えても子どもかもしれない。
幼子の時代を一時でも見てしまった身としては、今後どんなに成長しても「まだこども」の認識は抜けないことだろう……たぶん。

などとおのれに言い聞かせて


『まあ大きくなって…大きくなって…なんてこった…』


と呟きつつ顔の返り血を拭ってやったり、頭をわしゃわしゃ撫でまわして再会を喜ぶと、マダラ青年は困惑したつつもされるがままで目を細めた。めごい。
大丈夫そうだ、お互いに……だが安心したのもつかの間、


「兄さんに馴れ馴れしく触るな突き!」


脇腹に加減の無い正拳突きを入れられた。


『ウッ…クソガキ…』


完全に油断していたためそのまま崩れ落ちる。とんでもない弟だ……容赦なく追撃しようとしてこようという間に、マダラ青年が入ってくれる。


「よせイズナ…お前、庇われていただろ…」

「頼んでないよ!それに、罠かもしれないし…!きっとそうだよ!余所の忍に雇われて兄さんや僕を謀ろうとしているんだ…!危険だよ!肋骨何本か折ったから、今のうちに殺っちゃおう!」

「やめろ、そんな大層な真似ができるやつじゃねぇよ…」

「兄さんは甘い!」

「そうだな、わかった。あとでゆっくり話をしよう……おい、大丈夫かよ……」

『……ご機嫌だよ……』


ぎしぎしと痛みが増していくと比例して脂汗を流す私の脇腹。マダラ青年がすこしためらいつつも体全体を支えるようにしながら擦ると、案の定というべきか、痛みは余韻すら無く消えた。



しあぐねている



コレが他の者にも使えたら、とお前は考えていることだろう。



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