我が敵に捧ぐ鎮魂歌
わるいこだあれ
ヤマドリはとりあえず腰のフックに引っかけて、手拭いで顔の血糊を吹きながら野郎どもに近づくと、気色ばんで一番若いと思われる一人が怒鳴る。
「止まれ!何者だ!」
『この山に棲む者です。あなた方こそなんです、相手は、まだ子どもではありませんか。大の男が数人がかりで囲んで……手籠めにでもするおつもりですか。趣味が悪いなあ』
「なんだと・・・!」
ちょっとからかっただけなのに、今にも斬りかかってきそうだ。
額に血管を浮かせる若い忍を、リーダー格なのか、ただ者ではなさそうな雰囲気を出している男がたしなめる。
「目の前の敵に集中しろ。その女からチャクラは感知できん。忍ではない。あんたも、死にたくなければこの場を去ることだ」
『……そうもいかないでしょう、この状況で…それにあなた方、近頃この山でころしすぎですよ。余所でお殺りなさい。余所で』
軽口を叩き、そのまま千手とうちはの間に入った。
自然とうちはを庇うような形となる。
『まあ、双方怨恨浅からぬことでしょうが、今回は獲物を収めて、家へお帰りなさい……』
とその場を収めようとしたのに、それをならぬと一番に声を上げたものが居た。
「ちょっと、余計なことをしないでくださいよ。僕はこのくらいの人数、屁でもありませんからね!」
後から。
よりにもよって助けようとしていたうちは弟の大ブーイングである。
まだ若い。力があるのはわかるけれども、もしかしたら、の想像力がいまいち足りない。彼が今、もし、ここで死んでしまったら、彼の兄は幸せになるどころではなく荒れに荒れ私をアチラへ帰さないばかりか世界をブッ壊しにかかる。
そういうわけである。
言うことを聞け。
『はいはい、あとでね』
「適当なことを言うな!どいてってば!」
『わかったわかった』
もだもだとした攻防を、どうやら千手は隙とみたらしい。
ふわっと風向きが変わった感覚、うちは父に斬りつけられた時と同じもの、数年経過し有難くない経験を積んだ今ならばわかる。
これが殺気だ。
忍でないとわかったうえで、うちは弟を殺すという目的ために障害となる私ごと斬るのだ。
双方血の流れない方法でと努めた私に何たる仕打ち。
大人しく斬られてやる義理も無いので、一番近くまで来ていた、先のリーダー格の男のクナイを受けようとナタを抜くと、
男の首がぽんと飛ぶ。
違う、私じゃない。
突然のスプラッタに驚いているのは私だけではなく、他の千手たちも顔色を変え緊張を高めながらも攻撃してくるが、動く端から腕やら足やらが斬りおとされていく。
気づくと後ろにいたうちは弟も参戦しており、一刻もせぬうちに周囲は血の海と化した。
酷いものだ。
足元に転がる首級を持ち上げ、身体のそばに置いてやる。
しゃがんだ顔に影がかかる。
仰いだ先に久しいお前。
わるいこだあれ
大きくなって!
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