やるせなさとほんとうのぼく
こわす
由嶌が私に遅れること云年、護廷十三隊に入隊したと聞き、会いに来た。
しかし先客が居り…あれは確か、九番隊八席になって最近調子に乗っているナントカ君…あれ?なんだっけ?まあいいか。
「なかなか真央霊術院を卒業できなかったお前がナア!」
なんて言われ、相も変わらず何か言い返すわけでもなくむぐむぐしている由嶌が変わっていないことに苦笑しながらナントカ君の後ろに回り込む。
「やかましいわ。由嶌より頭が悪く、私より弱いくせに。偉そうな口はすべてにおいて上回ってから言うものよ」
去ね去ね、と足蹴にするとすごすご去っていく阿呆から由嶌に目を移す。
「久しぶり。元気にしていましたか。あんな輩蹴りとばしてやればよろしいものを」
「………ああ」
「入隊おめでとう」
「………ああ」
「…私は、11番隊だから、今度遊びに御出でなさいよ」
「………ああ」
「……………。」
「……………。」
…あら、なんだろう。絡みづらい。
目を合わせず外界から自身を守るように背を丸めて俯いているけれど、大丈夫だろうか。
大丈夫じゃ、ねぇわな。
「…入隊したから伝令神機、配給されたでしょう?番号教えてよ。今度飲みにでも行きましょうよ。」
という誘いを口にした瞬間物凄く嫌な顔をした由嶌を無視して無理矢理番号交換をし――――――…
――――――――――………てから数年が経過したわけですが。どういうことなの。
始めは入隊したばかりで忙しいのだろうと思っていたが、一か月に一度電話しても絶対に出ないってどういうことなの。
確かに、確かに無理矢理であった。あったけれども、出てくれたっていいんじゃあないの。
たまには自分の隊とは別の、毛色の違う人と飲みたいのである。
折り畳み式のソレをパチンと閉じ、勝手に憤っていると、
アレ、あそこに見えるは先ほど電話した由嶌君ではありませんか!
何故白衣なんて着ているんだろう!まあいいや!ここで会ったが百年目!
憤りを勢いに背後からジャンピング・ニー・スマッシュを食らわせた、ら、
奴は悲鳴も呻き声もあげることなくその場へ崩れ落ちてしまった。
しまった思いの外イイのがキマッた。
今更焦り、とりあえず人目を気にしつつ呼吸の確認………おおよかった、死んではいない。
しかし状態はよくなさそう。
目の下にはくっきりとした隈が出来、何やら私が仕留める以前からげっそりしている様子…
もしかして:徹夜明け
………申し訳ないことを、してしまったなあ。
これは四番隊へ運ばねばならないだろうか、と思ったが、あそこはうちの隊と折り合い悪いし、あそこの隊長さんに出会った場合言い訳のしようがない。
怖い。
そしてなにより由嶌のこの白衣…確認のために襟元を裏返したら…なぜ12番隊。転属したのだろうか。
教えなさいよ、そういうことを!電話で!
あそこもうちの隊と折り合いが悪いし、あそこの隊長さんに出会ったら、言い訳するまでもなく、エグイ思いをしそう。
怖い。
よってコレ自身の部屋へ運ぶという選択肢が消えた今、私の部屋まで背負ってゆくしかないわけである。
許せ、友よ。
こわす
わたしの背中でゆっくりおやすみ
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