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やるせなさとほんとうのぼく
まどい

統学院入院からかれこれ数年が経過した。

少しばかり成長した私は、同期内でも屈指の実戦力を誇るが座学がすこしばかりアレな阿呆の典型と化し、
一方、入院を胃痛と共に迎え、私の背中でむぐむぐとしていた緑髪の由嶌少年は、同期内でも屈指の頭脳を誇るが実戦力がすこしばかりアレな美青年へと成長した。


私としては、頭が良くて美しいという天が二物をうっかり与えたもうたような奴がうらやましくて致し方無い。

しかし本人は自身に足りないものがあることが許せないようで、それを持ち合わせる私のことをあまり好いていない。

その為、近頃はあまり口をきいてもらえない……………………………………………………………ばかりか、あからさまに避けなさる。


なんて、世の中を生きづらそうな奴。

そんなだから統学院で話をする相手が私くらいしか居ないのである。


それにそう避けられてばかりもいられない。

座学中、うっかり夢の世界へ誘われてしまっていた間の手記を写させて貰い、且つ起きていても意味が解らなかった所を教えてもらわねばならないのである。

単位やばい。


もちろん、平生世話になってばかりだと、私の持ち得る僅かな良心が軋む。
よって、剣術の稽古中に奴を笑った無礼者共を、奴が治療へ行っている隙にこっそりシバき倒しているのでチャラということでここは一つ。


なんて、長々と回想をしていたら、彼処にみえるは由嶌君ではありませんか。

平生が如くなかなかに阿呆そうなガタイの良い輩に囲まれている。
皮肉を言われているのか、自身の腕をぎゅっと握り締めてむぐむぐとしている様が実に不憫。

ほとんど反射的に


「由嶌、」


声をかけると、私に気づいた、奴を囲んでいた阿呆共………と、それ以外の周辺の学生もサッと居なくなった。

上記で述べた私の行動により、私は統学院屈指のアグレッシブな阿呆と認識されているのである。

したがって由嶌ほどではないが、
私も友人が酷く少ない。

二人きりとなった廊下で、私と目を合わせようとしない彼に近づく。



「座学の手記を見せてくれつつ、内容全体的に、私にもわかるように教えてくださいお願いします」

「………阿呆。」

「まあそうおっしゃらず」



深々とおどけたように頭を下げるとやっとこちらに目を向け、
呆れたような諦めたような、自身の気持ちを、落ち着かせるような、ため息を吐かれる。

脇に抱えていた風呂敷を開こうとしているので、このため息は許可のため息と受け取ってよろしい。
やったね。



「助かるよ。ところでさっきは、何を言われていたの?」



目的が達成されると解った途端口が弛み余計なことを訊いてしまう、私の悪癖。
せっかく表情がほぐれかけていた由嶌の顔が再び強張り、また目を反らされ、一言、


「剣術」


と返された。
なるほど。平生が如く。
あいつらも、よくもまあ飽きないものだ。


由嶌の剣術は筋が悪いわけではない。
頭がいいから、相手の動きをよくみてその動きを読んで隙のつこうとするし、次の動作への無駄の無さなど見習うべきことも多い。
しかし頭で思ったことに身体の動作が間に合わない。
訓練不足というわけでもないのに、一体どうしてと首を捻るほど身体がついてこない。


………では筋肉に問題が?


私は目を反らしたままの由嶌を眺め、
ノーアクションで奴の上半身の服を剥いた。

あら、アザだらけではあるけれど問題はない、イイ身体。


「ひいッ」


無表情で身体を観察する私を前に悲鳴を上げる。
慌ててはだけた上衣を羽織り襟元を締めて顔を赤らめ涙目でこちら睨み、


「すけべ…!」


と呻いた彼に、何故だか酷く動揺した。








この胸の高鳴りは一体


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あきゅろす。
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