酸欠デイズ
宿題は計画的に
「はいこんにちは。今日も“夏休みの友”持ってきたかなー?」
「青子ちゃん先生ー!忘れましたー!」
「何しに来たんだよう。今日終わらせるって言ったろー!」
「きゃー!」
回覧板効果か、両手の指では余るほどの子供を親御さんから預けて貰えることとなった。
親御さんの中には祖父の教え子であった方もおり、
「なつかしいわ」
と笑いながらアイスを差し入れてくれたりする。
そのアイスをエサにして小生意気なガキ共に課題をこなさせるこの手腕を、誰か褒めて欲しい。
予想以上に子供の世話というものはタイヘンである。
一段落ついて休憩を入れていると、トイレへ行っていた子が半泣きで帰ってきて私の腰にしがみついてきた。
“夏休みの友”を忘れた子だ。
一体何事。
「おぉう、どうしたのー?」
「せ、先生、この家、他に誰か、いる…?」
「…………。」
尚、子供たちが居る間はマダラさんには与えた部屋で大人しくしていただいている。
センセーショナルな忍者漫画の登場人物を子供たちが知らない可能性は低い。
しかも悪役。
倒そうとか、思うかもしれない。
そして彼は大人げないところが私生活の端々から伺えるので、返り討ちにするかもしれない。
タイヘンである。
そんなことになっては困るので、マダラさんとも事前に話し合って気配を消すと、約束をした。
しかし子供は変なところで大人よりも聡いのでちょっとしたことからマダラさんに気づくこともあるかもしれない。
「…………いないよ」
とりあえず、いない、ということにしてみた、が、“いない”と言った瞬間、腰下の子はぼろぼろと泣き出して、叫んだ。
「おばけ…!」
その悲鳴に他の子達もわらわらと集まってきた。
泣きわめく子を何とか落ち着かせて話を聞くと、廊下の奥にあるトイレから出て教室へ向かおうとしたら、誰もいない筈の部屋から大人の男に声をかけられたのだという。
「何て言われたの?」
「夏休みの友、忘れるなよ、って」
「…………。」
何やってるの、あの男。
すると他の子達も“廊下を走るな”と言われたり、その日のお菓子を取られたり、庭の池に落ちそうになった所を救われたりしているという。
ここまで接触があるにも関わらず誰一人として姿を見ていないあたりが、流石、というべきか…………否、ただの能力の無駄遣いである。
休憩が終わってもやいのやいのと“おばけ”の話で子供たちは盛り上がり、私は約束を守らない“おばけ”にイラッとした。
夏休みの友は終わらなかった。
宿題は計画的に
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