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酸欠デイズ
追わないから、逃げないで

切実な問題が発生した。
お金が無い。

家守といっても元々大した額は貰っていなかったのだけれど、それでも一人で細々と暮らすには十分なものだった。
しかし“マダラさん”という不測の事態により、我が家は今、火の車なのだ。


「…というわけなので、とりあえず夏の期間だけ小学生向けの塾を開こうと思います。」

「塾?」


扇風機の前でガリ●リ君を食べていたマダラさんが顔を向ける。
長い黒髪を団子にして、実に涼しげ…ではなくて


「元々この家は私の祖父の家で、寺子屋のようなことをしていたのです。
私も一応、教員免許を持っていますし、小学生相手くらいなら全教科何とかなるかな・と思いまして」


夏休みの宿題を見てやって、麦茶やスイカでも出してやれば良いだろう…という安易な考えである。
塾というより、寺院や神社などでやっている子供会のようなものに近いかもしれない。

…………ボランティアではないが。


「なので、少しばかり家が騒がしくなるかもしれないのです」

「ああ、別に構わない。世話になっている身だからな…何か手伝えることがあったら、言ってくれ」


すまないな・と囁きながらじりじりとにじり寄ってくるマダラさんを避けながら笑みを返す。
最近スキンシップがあからさまに過激になっているので、身構えるのは致し方ないこと。
ご理解戴きたい。


「良かった、では早速チラシを回覧板に入れて回してきますので蔵に仕舞ってある長机を三つ程出して雑巾で拭いておいてくださいお願いします」


頬を撫でようと伸ばされた手を持っていた回覧板で軽く殴り付け、私は家を出た。

生徒が何人集まるのか楽しみである。


追わないから、




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