酸欠デイズ
消滅願望・後(友人視点)
「惚れた」
その言葉を聞いた瞬間思ったことは、
『青子ちゃん逃げて!超逃げてー!』
などという相手を思いやるようなものではなく、至極利己的なものだった。
これはチャンスだ、と。
普段の私からは想像できないほどに頭を働かせて、自分が自由かつ平和で快適な日々を取り戻す為の計画を練った。
喜ばしいことに、この計画は私だけではなくマダラ様も幸せになる。
素晴らしい。
そうと決まれば行動あるのみ。
以前から打診されていた海外赴任の件について返事を出し、作戦日には日本を発てるようパスポートを探し出し、自分とマダラ様の荷造りをして、身の回りを整理して、
青子ちゃんに電話をかけた。
断られることは無いと確信していた。
写真写りは犯罪者並の凶悪さでも、彼女自身は友人に優しい人だから。
…………その優しさに付け入る真似をするということに今更ながら気がつき、罪悪感が生じたので、謝罪の手紙を書くに至った訳だけど…………
そして作戦前日、
マダラ様と私は、双方の送別会を行なった。
マダラ様の好物である稲荷寿司を中心に食卓にはごちそうが並べられ、私もマダラ様に酌をしつつ大いに飲んだ。
普段飲まないからアルコールに耐性の無い私はすぐにぐでんぐでんになり、マダラ様はそれを未知の生物を見るような目で見ていた。
「オイ、マダラァ…!惚れた女は幸せにしろよなァ…!」
「…………大丈夫か、お前」
ぐでんぐでんの私に恐るものなどなく、思いきり絡んだ。
「ダイジョブに決まってンだろナメんなよ…明日の今頃は空の上…ヒャッホオオオオオオオウ!」
「……………………。」
「青子ちゃんにあまり迷惑かけんなよぉぉぉおうぇぇぇぇ…気持ち悪い…」
自分のことを棚にあげた発言をしながらえずくと、面倒臭そうに背中を擦ってくれた。
なんだ、優しいじゃないか。
「…この俺が迷惑なんてかけるか。
子供が出来たら、連絡してやる」
「…………ふぅん」
なんかもう、突っ込み所がありすぎて適当に答えるしかない。
ごめんね青子ちゃん、私は自分が一番可愛い。
消滅願望・後
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