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酸欠デイズ
消滅願望・前(友人視点)

もはや限界だった。


突然押し入れから現れた恐ろしく攻撃的な男と生活して一週間…………もっと長かった気がする。

唐突に訳の解らない出来事に巡りあって混乱しているのはお互い様なのに、
苛立ちを総てぶつけられ、土下座しながら状況説明をしたその時から私たちの上下関係は出来上がっていた。

唯我独尊とはあの方(嗚呼、意識せずして“あの方”とかいってしまう下僕っぷりが悲しい!)の為にある言葉だ。

あの方が来てからベッドの献上は勿論、

「喉が渇いた」

と言えば茶を淹れ、

「腹が減った」

と言えば稲荷寿司を作り、

「鷹狩りがしたい」

と言えば鷹を捕まえ調教した上で猟ができそうな山へと案内した。
(余談だがその山は禁猟区だった為、近隣の住民に役所へ通報されダッシュで逃げた。)


胃はただれ、体重は10キロ減り、髪は抜け、目の下にはくまさんが居座り出した。

これからの人生、あの方がお帰りになられるまでこの生活がずっと続くのかと思うと、死にたくなった。
というかまじで死ぬかと思った。


そんなことを考えていた矢先に、チャンスは訪れた。

マダラ様が、私の高校の卒アルを発見したのである。

始めは恥ずかしさのあまり悶絶し、無謀にも取り返そうとしたが一蹴され地に伏した。
ストレス性の胃痛に腹を抱えながらぱらぱらとさほど興味無さげにページをめくるマダラ様を見ているほか無かったのだが、あるページまできた時に変化が起こった。

ぴたりと動きを停め、目を細めてしばらく一点を眺めたかと思うと、その箇所を指差し、私に訊ねた。


「これは誰だ?」


青子ちゃんだった。

写真写りが悪く、このアルバムの写真もほとんどが指名手配犯のような顔をしている。

親友とまではいかないがそこそこ仲の良かった同級生…今は確か親戚の日本家屋の家守をしていると聞いた・と、写真の三白眼を見ながら簡単に説明すると、マダラ様は青子ちゃんの部分をクナイで器用に切り取り、自分の懐にしまい込んだ。


訳が解らずぽかんとすると、そんな私を鼻で笑って、さも当然であるかのように宣った。


「惚れた」



ああ、さいですか。




消滅願望・前



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