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酸欠デイズ
好きの条件
(※友人視点)


普通の女の子ならば、ここでイチコロ、何処へなりともついて行くことだろうが、相手は青子ちゃんである。

ただでさえ白い肌、血の気が引いたことで青白いというか、もはや青い。
瞬きもせずに相手の目を見つめるその顔に表情は、無い。

理屈で解決できると踏んでいたのに

「理屈じゃねえ!!」

に等しいことを言われてしまったのだから、仕方がない。

………そういえば、彼女は理屈外の感情論を伴う問題は苦手なのだった。
そして恐らく、マダラ様もそれは重々承知の上で感情論に持ち込んでいる。
青子ちゃんにはかわいそうだが、マダラ様のほうが一枚どころか三、四枚ウワテだ。
もはや何を言ったところで逃げられない。逃げ道を作っているつもりが、その逃げ道の行く先が全て彼に繋がってしまう、この絶望感。
まさに「諦めるのはお前だ」状態。

他人事で本当に良かった。


しかし、空気ははりつめたまま…
つまり、未だ青子ちゃんは説得を諦めていないということ。

あ、懐かしい。

青子ちゃんの話が通じない人を本気で説得しようと覚悟を決めた、この顔…
高校時代、生徒総会で体育教師相手に喧嘩した時の顔と、全く変わらない…

などと他人面して思い出に浸る私を青子ちゃんは一瞥。
生ゴミでも見るような眼に、思わず唾を飲む。
あれ、この眼、マダラ様とそっくり………この二人、案外似た者同士なのでは。

怯んだ顔の私を見て何の役にも立たないと判断したのか、彼女は天井を仰ぎ、息を吐く。
少しだけ、頬に色が戻る。


「…なるほど。おっしゃっていることはわかりました。
しかし、私を連れ行き、その後はどうなさるおつもりか。
子もなせぬ石女を傍に置いたところで、何の特があることでしょう…」


と、小さい子に言い含めるように言葉を紡いでいるが、その様すら愛おしげに目を細めているマダラ様は…なんかもう、狂気すら感じる。


「子は別に要らん。
お前が隣に居てくれさえすれば、俺はきっと何でもできる。」

「それは永続的なものではありませんよ。
ヒトの気持ちは移ろうもの。そんな曖昧なものを信じて、全く知らないところへなど、ついて行けるものですか。」

「何事にも例外はある。例外は常に正しい。
今の俺には、俺を信じ、俺に護られる者が必要だ。例外は俺が作ろう。俺を信じてくれ。」

「貴方の何を信じろというの…。
いいえ、いっそ信じたとして、私にとって、そこに何のメリットがあるというのです。」


どんなに真摯な、感情籠もった言葉の羅列にも動じずなびかず、合理的に物事を判断する彼女は多くの敵を作ってきた。

いくら言っていることが正しくても、彼女はそれを身内の利潤の為に用いるからだ。
元からの身体の弱さに加え、この短所によって生まれた外敵に、彼女はうっかり刺された。
刺され所が悪く、しばらく療養することになった………というのが、家守を行うこととなった経緯らしい。
Facebokで集めた情報だ。

そんな青子ちゃんは話し合いを続けることで、マダラ様に自身を嫌わせようというのだろう。

大丈夫かな…
色々と紙一重な気がする。
マダラ様に刺されたら、療養どころでは済まなそうだ。

しかしマダラ様の愛…もとい狂気は青子ちゃんの捨て身の攻撃すらものともしていないことがわかった。


「…メリットか。ふむ。そうだな…」


ふわり、

縁側から風が入った瞬間、ちゃぶ台を挟んでいたにも関わらず、どうやったのか青子ちゃんとの距離を一気に縮めたマダラ様は、彼女を片手で抱え込む。
突然のことで、青子ちゃんはバランスを崩し、されるがままだ。
それを良いことに暴君は、空いている手で彼女の腹部を探るように撫でる。
ウワッ…おそろしいほどの色気。

「メリット…お前が共に彼方へ来てくれるというならば、」

「皮膚の傷」
「傷ついた肺の腑」
「痛んだ胃の腑」
「機能しない子宮」

「…全て治してやろう」



好きの条件



アッ、青子ちゃんが揺れた。

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あきゅろす。
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