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酸欠デイズ
卓上戦争ー後半戦ー

お互い理屈をこねくりまわしたりこねくりまわされたりしたが、双方折れる気など毛頭無いので泥沼と化し始めている。

こういう局面は根気と体力があるほうが有利だ。
根気も体力も無い私に勝ち目は無い………と思われるかもしれないが、実はマダラさんが私を見初める理屈の何かしらさえうまいこと覆してしまえば、案外簡単に問題は解決するのではないか、と考えている。


「そもそも、なぜ私にそこまでこだわるのですか。
女など、この国の稲荷寿司専門店よりたくさんいますし、貴方ならばもっと良い女も選び放題のはずだ」



卓上戦争 -後半戦-



「…詳細語ると明朝までかかるので端的に申し上げよう。
気づいていないようだが、此方の人間には写輪眼をはじめとした幻術関係の諸々が効かない。
これは青子に限らず、そこの馬鹿にも家に来たガキ共にも通じない…
よって、まずは遺伝子レベルで興味がある」


…知らなかった。
というか、そんなことを試していることが恐ろしい。
だが、遺伝子云々に関する興味であるなら


「じゃあ私でなくともコレでも良いではありませんか!」

「えっ」


高みの見物決め込んで甲子園を観ている奴を親指で指す。
しかしマダラさんは、やれやれ、とばかりに肩をすくめて小首を傾げる。


「俺にも選ぶ権利くらいある」

「えっ」

「………。」


友人のみ負傷し、話は続く。


「他、青子個人として好いているところを挙げると、きりもない上それこそ野暮というものだ…
強いて言うなら、なんとなく懐かしい気がするんだが…
………なあ、どこかで会ったような気がしないか」


しない。

野暮だなんだと言いながら、内容はその実、一昔前のメロドラに出てくるようなものだ。

…こんなに好かれることなど、あまり無いので、正直、有難いことだと思ってはいる、



そんな曖昧な個人的感覚を理由に、異世界へ連れていかれるなんて、御免被る。

彼は彼方にて、時系列にもよるが、なかなかの社会的地位を得ていると聞く。
それなりに体面などもあろう。
生殖機能が無いとか、そんな感じのことを述べて、諦めていただこう。

諦めてもらわねばならない。


「…貴方のことはそこまで嫌いではありません、むしろ顔なんかかなり…ストライクゾーン変化球すっぽ抜けインコース高めでホームランといった感じです…
自身のことをここまで好いてくださることは大変有難いと思っています…
しかしわたくし、実は生殖機能が無いので…彼方へ共に行ったところで一緒にはなれません…」


などと俯きがちに、しおらしく述べてみる。
彼方の世界のこの人の時代にて、一族の長が石女を娶るのはマズかろう。

大丈夫だ、勝てる。

確信をもって視線を上げ、相手の様子を見る、と、

ーーー…何故笑っている。


「ああ、青子…
俺はもう彼方でも、体面やらはどうでも良い状態となっているので心配はいらない…愛さえあれば問題なかろう………な ん て な 。

さて、お前が納得いくようにと理屈をこねてはみたが、どう言っても理屈で返され、ご理解いただけないようなので…明言しておこう。

俺は諦めない。
欲しいものは欲しい。
やるといったらやる。」

「必ず、お前を連れ帰るぞ」



か…カアッコイイーーー…(絶望)



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