酸欠デイズ
卓上戦争-中盤戦-
ちゃぶ台を囲み麦茶を啜る。
アイスブレイクとして友人にアメリカでの土産話をさせたが、憤りしか覚えず場の冷やかさに拍車がかかるばかりとなった。
戦いを覚悟はしたが、死に急ぐつもりはないのでBGMとしてテレビから甲子園野球を流している。
………高校生がこんなに頑張っているのだ。
私も頑張ろう…私も…私も…
ブラスバンドのエスパニアカーニに背中を押されるように口火を切る。
「さて、せっかく三人揃ったことですし、今後のことでもお話ししませんか。マダラさんも、お帰りになる方法が未だ解らないというのは不安なことでしょう…」
「………帰る方法は、この家に来る前から、目途がついている」
「えっ」
卓上戦争 -中盤戦-
「聞いていませんよ」
一球目からホームランを食らったような気持ちだ。立っていたら膝から崩れ落ちていたかもしれない。
動揺のあまり脈が狂ったので拳で胸を殴りつけ、返す拳で友人にボディーブローを食らわせる。
「グヌゥッ…ごめんなさい青子ちゃん…これにはさほど深くはないけれど恐ろしい理由が」
「おい馬鹿、お前、俺の淡い恋心を本人の前で暴露しようとは良い度胸だ」
「ご自分で!ご自分でおっしゃっちゃってますよ!」
オヤいけね、とばかりに肩をすくめるマダラさんは、完全に現状を楽しんでいる。
何なんだこれは。
「茶番は結構です…帰る方法が解っているということは、此方へ来てしまった理由もわかっているということなのですか…」
話題が恐ろしい方向へ流れようとしているので無理やり方向を変えた。
何やら平生に比べ、サドの気が見えるマダラさんはボディーブローを食らいうずくまる友人を踏みつけつつ、首を軽く傾げてこちらに色っぽく目をくれながら、それに応える。
「………来た理由は、まあ、そうだな…偶発的な事故だ。何でもかんでも原因理由があるわけではない。よって、原因理由を解決したりする必要はなく、来た一週間後には彼方へ帰る方法を見つけることができていた。」
「なぜお帰りにならないのです………帰りたいのではないのですか」
「帰りたいとも」
目を細め、口角を軽く上げる。
「お前を連れてな」
うわっ…怖い…
あわよくば逃げようと思っていた話題からは、どうあがいても逃げられないようである。
しかしまだ…今ならまだ軽く跳ね除けられるのでは、という、淡い希望的観測から間をあまり空けずに早口で返答する。
「いやそれは隕石でも墜ちない限りありえないですねぇー!」
「………それはつまり、隕石が落ちれば良いということか」
「………?………。………!!!!!?」
「………!………!」
「駄目ですよ。隕石落としても駄目なものは駄目ですよ」
「落とさないでくださいね!落とさないでくださいね!」
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