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酸欠デイズ
地獄の底でも笑えるか


こんなにまじまじとマダラさんの顔を見たのは、彼が初めて我が家へやってきたとき以来だ。

相変わらず整った顔をしておられる。
凄みのある美しさである。

と、いうか、相変わらず全然まばたきしないし、じわじわと腕の力もつよくなるし、

怖い怖い怖い怖い怖い
近い近い近い近い近い

思わず死を覚悟し、それでも野郎の思うままになってたまるかと、顎を引いて目をカッ開き歯をむき出して威嚇した、
時、



ピン、ポーン



―――…どうやら、風はまだこちらに吹いているようだ。

突然の来客!

回覧板か塾生か宅配便か知らないけれど、普段から滅多に鳴らない呼び鈴がこのタイミングで鳴るなんて…
日頃の行いが良いからに違いない。


「はぁい、いま行きますぅ!
…お客さんのようなので、ちょっと失礼しますねごめんなすって!」


身体に巻きつく腕をパンッと弾くように叩くと、思いのほかすぐに離れる。
野郎の気が変わらぬうちに、身体をひねって一度距離を置いてから立ち上がろうとしたのだが、


「………な、んですか」


腕を掴まれ動きを止められる。
戦慄しつつ振り返ると、どうやら、こちらではなく玄関のほうに意識を向けている様子。


「…俺も行こう」


なぜ。

良くない可能性が脳内に並び出す。
よもや強盗的な何かか。まさか親戚が帰ってきたのか。もしや両親なんてことはあるまいな。強盗云々ならばともかく、家族にあいさつだなんて、洒落にならない。


「いやだな…来客対応くらい一人でできますよ…」


掴まれていないほうの手で掴むその手をそっと、しかしそれなりに力を込めて引きはがそうとする、のに、痛みが伴わないにもかかわらず絶対剥がれないという絶妙な力加減で拒まれる。ど畜生である。
その後数秒ほど無言の攻防があったが、こちとら朝からの緊張により疲労もピークにきているため、これ以上の負担は内臓に影響を与えると判断した。
やむを得ない。
一定の距離を取ることを条件に、玄関まで共に出ることとなった。
つっかけを履いて引き戸を開ける。

「お待たせしました…」

「あ、青子ちゃん…こ、こんにちは…お久しぶりです…」

「………。」

「………。」



地獄の底でも笑えるか

様々な元凶といえるクソアマがそこには立っていた。

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