酸欠デイズ
こんなに明るい夜だから・前
就寝前に自室中を見渡す。
夏なのに窓と雨戸の鍵を締め、押入れと出入口の襖につっかえ棒を立て掛ける。
普通であれば、外からの侵入は不可能………しかし相手は普通ではない。
忍者だ。
近頃のマダラさんの距離の詰めっぷりは異常である。
当初、家の最も奥にある客間を彼の部屋にと提供していたのだが、どうやら寝床がだんだんと移動しているようで、
私の部屋の二つ隣の部屋に、
縁側に、
そしてついに、今朝目を覚ますと自室の障子に野郎の影がうつっていたという…なんとも何処かの怪談のようなお話である。
塾っ子たちに「おばけ」扱いされたからといって、本当におばけのような真似をするのは如何なものか。
今貴女の後ろにいるの、
ということは、避けたい。
急激に距離を詰めてきたマダラさんに私が対抗する術などこの程度、気休めにしかならないが、入って来るなアピールくらいにはなろうと、微々たる努力をしている。
なんだかんだいって、奴は居候の身である。
無茶はすまい、と判断して、
消灯………
した数時間後、謎の寝苦しさに目を覚ますと我が家のおばけが私の腰と頭に手を回して固定し首筋に顔を埋めていた訳ですが。
こんなに
明るい
夜だから・前
後ろにいるの、とかそんなレベルの話では無かった。
これは危機的状況だ。
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