忍者
夜明けまでおしゃべり・上
「まさか遭難するとはな」
なぜか少しわくわくしている奴の名は、うちはマダラ。
誕生日に雪山で遭難した男だ。
外は吹雪。
風が吹くたびに揺れる山小屋。
試行錯誤して着けた暖炉の炎が室内を照らしている。
ここは欧州のスキーリゾート某所……ドキソ会、ついに国外進出である。
年末年始の阿呆のような忙しさの中、更に無理をして、長期休暇を根性により手に入れた我々は、修学旅行のような心持ちで今日を迎えた。
昼間はウィンタースポーツをし、夜は貸し切りロッジにて酒をしこたま飲んでぶっ倒れるまで健全に遊ぼうとしていた矢先のことだった。国内とはまた違う雪質を楽しみ、スキー場のビールの美味さに舌鼓を打ち、明るいうちにスキー場から宿泊予定地のロッジまで向かおうとした酔っ払い一同は
「泊まる場所ってここから見えるのだね」
「およその方向が分かれば、スキーで滑って帰れるのでは」
「新雪を滑るのも面白そうだ」
などと抜かし、この様だ。
コース外の滑走は、絶対にしてはいけない。
「とりあえず一晩をここで過ごして、明日の天気次第で麓におりよう」
「そうだね……よかったよ、オビト君が火打石収集家で……君の火打石がなければ、私の往復摩擦式発火法スキルを使わなければならないところだった」
「あれはなかなか時間と労力がかかるからな」
そうそう、ワハハ、と笑っているが、クリスマスイヴ&誕生日会のために、今年もそこそこ良い値段を使っており、それが総て無駄になりつつある気配を感じ、油断すると顔を覆いそうになる。
しかししない。
大人だから……
旅費もパスポート代も全部出すと言ったらのこのこついてきた大学生のオビト君のためにも……同じサークルで小学校の頃から恋をしているリンちゃんにクリスマスデートを申し込んで玉砕した話を酒の肴にするためだけに呼んだというのに、それを玉砕した気晴らしのために呼ばれたと思い込んで、のこのこついてきたオビト君の引き攣った笑顔を前に、私にできることは、このドキソ会を楽しむことだけ……
それはさておき、本当の不幸中の幸いは、マッさんの機嫌がすこぶる良いことだ。
ドキソ会、もはやこの男の暴走を止めるためだけに存在していると言っても過言ではない。遭難発覚後も機嫌良く、うちは家代々伝わる幼少時サバイバル訓練の成果を発揮して寝床の準備等をしてくれた。
この密室空間で空気が悪くならなくて本当に良かった……ただでさえ酒が入り、酒が入らずとも問題を拳で解決しがちな我々だ。以前であれば無敵サンドバッグ千手が居たので、危なそうな気配を察すれば千手に矛先を向けるよう誘導できたが、奴はもういない……最後まで立っている奴が勝者のデスマッチ(負け戦)が始まってしまう。
避けねばならない。
この男とも大分長い付き合いになったが、付き合いが長引く程に地雷は増えるばかり。七面倒くさい奴ということしかわからなくなってきている。そうでなくともなにが起こるかわからない状況ですべきことは一つ。
「こうなってはもう仕方がないね。明日に備えてもう寝ましょう」
早く寝かしつけるに限る。
「まだ九時前だぞ。火の番もせねば……しかし夜は長い。どうだ、普段できない話をするというのは」
「…………。」
厭だ…………。
議題がフワッとしすぎているうえ、味方とするには頼りない疲労困憊のオビト君を気遣いながらマッさんと普段しない会話をするのは、脳を使いすぎる。疲れることはしたくない。
とりあえず、議題を明確にすれば多少はマシな状況になるはず……
「では……では……怪談……とか……」
「…………。」
わかっている。
オビト君、そんな目で見なくてもわかっている。
普段できない話とはそういうことではないと、わかっているのだけれど、雪山で遭難して山小屋に避難している人々がする普段できない話で思いついたのがそれしかなかったのだものな……しかしこのメンツで怪談はない。
なんちゃって、で別案を出そう。
「なんちゃっ
「よかろう……雪山で遭難して山小屋に避難する俺たちにふさわしい」
夜明けまでおしゃべり・上
地獄の怪談会の開催である。
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20181224
happybirthday UCHIHA
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