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クリスマスバーゲン
(※ドキソ)


諸君、今年もこの日がやってきた。
メリークリスマス。

美しいケーキとオーガニックワインを手に、うちは氏のご自宅門前にてご挨拶申し上げる。
外観は知人のヤクザの屋敷に近い。違いは監視カメラが比較的少ないことくらいだ。
ないわけではない。ある。

……それはまた、別の話として。

本当は、今年も皆で理由をつけて千手弟をボコる算段をしていたのだ。しかし今朝方、去年知り合ったマダラ氏親族のオビト君よりラインが届いたことにより事態は急変する。


「鬼の霍乱!!!」
「(喜びで天に向かって拳を振り上げるスタンプ)」


マダラ氏の急病により今回のドキソ会(※独身貴族の底力みせてやるぜ会の略)はお流れかと用意したアレコレを前に電卓を手にしたが、その数十分後に、再度オビト君より、計画通りいかないことや自身の身体がうまく動かないこと等の理由により絶望的に機嫌が悪いマダラ氏をどうにかしたい旨の応援要請が来てしまった。

正直、既読無視したい。
しかしそこそこ長い付き合いではあるし、先にも述べたが用意したアレコレ諸々を無駄にするよりは、共にクリスマスを過ごしたという既成事実を作り、ワリカンしたい気持ちもある。
また、ここであの男に恩を売っておくのも悪くはない。


「よしきた、任せよ」


と返信すると


「やだ……頼もしい……」
「(美少女が頬を染めるスタンプ)」


との即レスである。
オビト君、幼い頃の事故により顔に傷があり体つきもシッカリした筋肉質で幼馴染をまだ好い続けている硬派な男だというのに、言動や文面にしばしば女子を感じる……不思議な男だ。

回想はさておき、門脇のチャイムを鳴らそうと指を添えると、押す前に玄関が開いた。

オビト君は無言でうなずき、門内へ私を招きつつ荷物をいくつか引き取った後、監視カメラの死角を確認したところで、無言のままスッ……と片手を上げた。
意を汲みその手に力強くハイタッチをかまし、そのままガッシと握手をする。


「いらっしゃいませ」

「お招きいただき恐悦至極」


とりあえず客間に通され、オビト君がケーキ等を冷蔵庫へ入れに行った間に除菌ウェットティッシュで手を拭きつつ部屋を見渡す。
詳細は省くが、全体的な感想を敢えて申し上げれば、威圧感がある。
なんとなくむかつくので足を崩し、高そうな卓袱台に肘をついてやる。

ふと風を感じ、そのまま襖へ目をやると


「……来たか」

「いや……布団に入っていなさいよ……あとでちゃんと顔を見せに行くから……」


家主である。
いくらか毛に張りがない。
目も潤んでいる気がする。というか声ガッスガス。
間違いなく病人のようだ。

言い含めて布団へ戻した直後に戻ってきたオビト君に、まずは一番大切なことを聞く。


「ちょっと……インフルエンザじゃあないでしょうね……即帰よ、即帰」

「いや、いや、インフルエンザではないです。何か……ふふ、胃炎らしくてですね……弱ったところに更に風邪貰ってきて、身体の置き場がないくらいツライらしいッスよ……ふふふ」

「めちゃくちゃ笑ってるじゃない……貰ってきたって、診察した病院とかから?」

「いえ、千手さんから。弱った柱間を笑いに行くって言って、貰ってきて、ふふ」

「なぜそんな……最高に面白いことに……かわいそうに……ふふ」


お互い声をかみ殺して大爆笑だ。
かわいそうだが自業自得。

これでは酒もケーキも召し上がれまい。
誕生日でもあるというのに、難儀なことだ。
形だけでも看病をして、寝かしつけたらワインを半分飲んで帰ろう。
さっさと帰ろう。

そうと決まればすぐに寝室へ案内をしてもらう。


「マダラさん、改めてお邪魔しています。ご加減すこぶる悪そうで」

「よく来た黒子。千手を殺す……」

「おおよしよし……ですね、ですね……台所を借りて大根湯作ってきたので、飲めそうだったら飲みましょう」

「手足が寒い……人肌で温めてはくれんのか」

「オビト君、パンプアップで温めて準備しておいて」

「えっ……」

「くっ……」


うちはのみ負傷という地獄はそのままに看病を続ける。

大根湯パワーにより出てきた汗を拭ってやったり、
水分補給を手伝ったり、
「おくすりのめ●ね」を使わずにお薬が飲めたことを褒めてやったり、
うわ言に適当な相槌を打ってやったりしているうちに、
やっとマダラ氏はうとうとしてきた。

好機。

ゆっくりと布団の上からぽんぽんしてやりつつ、小声で子守歌にクリスマスソングを歌ってやる。

眠れ……このまま朝まで……

呼吸が深くなり完全に寝入ったところで、そっと顔にかかった髪を払う。少しは良くなったのか、眉間にしわを寄せることもなく、穏やかな寝顔だ。
よし、やることはやった。
飲んで帰ろうと顔を上げると、いままで言われたとおりにパンプアップをしていたオビト君が、スッと近づき、手を口元に添えながら呟いた。


「いかがですかお客様。こちら、大変お買い得ですが」



クリスマスバーゲン






「結構ですぅ」




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Happy birthday!20171224







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