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忍者
ばかを愛して(マダラ+イズナ)
(※「あたまの悪い犬が二ひき」の設定)


数歩進んだ先のほう、細い枝に続けてトトンと獲物が刺さる音がする。


「ヤアヤアお二方!修行中ですか。精が出ますね!」

「お、お前……お前……どのツラ下げてお出でだよ……」

「このツラでぇす」

「厚い……厚すぎるツラの皮だよ!」


相も変わらず出会い頭に噛みついてくる小姑イズナ、彼が何を怒っているのかさっぱりわからない。
私はただ、彼の優秀な能力を持つ兄を唆し賭博場へ連れて行き一儲けしただけだし、そのお礼を兄のほうにしようとここまで来ただけだし、あとは、きっと一緒にいるだろう弟を暇つぶしにからかおうと思っただけだというのに。


「いいじゃん勝ったのだから!写輪眼がばれないように黒メガネだってしたもんね!ね、マダラさん!」

「ああ」

「イズナに見せてやってくださいよ、おうおうイズナ君、お前の兄さんメチャンコ黒メガネ似合うぞ。まるでどこかの長のようだよ」

「実際未来の族長だよ!なにがまるで、だよ!兄さんも黒メガネ見せてくれなくて良いから……似合っているよ、似合っているけれど!」


私のようなアホンダラは増長するとその長さ留まるところを知らぬので、すっかりナカヨシとなった体で、黒メガネをするマダラさんに肩を組む。
その様子にイズナはぷんすかしているが、そのぷんすかしているところを見るのが結構好きなので、あえて気にしない。


「イズナ、そう怒ることはない。俺もなかなか楽しめた」

「ほらァ、こうおっしゃっているものね!私から言わせていただけば、みんなもっと遊んだほうが良いと思うな!いつ死ぬかわからないのだから!」

「兄さんは優しすぎる!それとお前、黒子、いつも思うけれど、会話中、急に自分の生死観ぶっこんでくるの、やめてくれない?ぎょっとするから」


ぷんすかが過ぎて冷静になり説教の体勢になってきたので逃げ出す頃合いを見極めようとしていると、優しい兄がこちらの肩を組み返しつつ弟を制する。


「まあ聞け、イズナ。誘われなければああいった場所へ行くこともなかった。良い勉強になった。特に、少しばかり勝ちすぎて奥から柄の悪い輩が出てきそうになった時、出てくる直前でそれに気づき

「マダラさん、そろそろずらかりましょう」

と立ち上がり駈け出したその逃げ足の速さには感服した。以前お前が言っていたろう。黒子は感知と遁走に長けていると。こいつの能力を知ることができて良かった」


皮肉なのだか好意的解釈なのだかわからないが、美しいかたちの唇から矢継ぎ早に言葉が出てくる様子が怖くて逃げたいのに肩を組まれた腕が地味にキツくて逃れられない。
隙を作る必要がある。


「いやあ、なんだか褒められて照れちゃうな!
ははは、それにしてもマダラさん、主語が絶妙にふわっとしていて、なんだかいやらしいことでもしたように聞こえますね!」


ヨッ、色男!と茶々を入れる。
こういった真面目そうな手合いにはちょっとでも下世話なからかいがべらぼうに効く。というか、イズナには効く。現に視界の端でぷるぷるしている。なので、更に真面目そうな兄にはもっと効く。

はず。

だが。

ちらとこちらを見下ろし、ふっと顔の表情は緩め、肩に添える手の力を強められた。


「……そうか。そうだな。お前相手であれば、それも面白いかもしれない」


…………なんと。



ばかを愛して


その場はイズナの猛防対私によって何とも言えない空気は無事霧散されたが、本当に恐ろしいのは、後日、

「いやあ、やはりマダラさんには敵わないな。ちょっとからかおうとしたら、恐ろしい冗談で返ってくるのだものな」

とイズナに詫びを入れた際に、スンッとただでさえ黒い眼に更なる濃さを帯びさせて

「兄さんはああいった冗談は言わない」

と返されたことである。
ぞっとしないね。


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リクエスト、「兄弟仲良いなと思っていたら知らぬうちに口説かれている」です。



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