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ネイキッド(マダラ)
(※「我が敵に〜」番外)

この山はどうやら火山らしい。

件の河原とはまた別の、住処に比較的近い川にて、流れの緩やかな一部分から温泉が湧いていることを発見した時はとても嬉しかった。
WCでサッカー選手がゴールを決めたときのような喜び方をしたものである。

無論、一人で。

この山でヒューマンと偶発的に遭遇すること自体が稀なのだ。
こちらへ来たばかりの時は、星の巡りが悪かったとしか言いようがない。

そう、人に遭わないほうが良いこともある。

遭わないからこそ、こんな川辺の温泉を楽しめるのである。

川底を均し、岩で水と湯を分けて簡易的な湯船を作ってのんびり極楽。
身体を温めることで代謝を上げて健康かつ健全な日々を送り、生き延び、彼方へ帰るのである。

できれば成長し完全体となった元凶と会わぬうちに帰るのである。


「……な、」

『…………』


……まあ、なんとなく、自分でもフラグを立てすぎているとは思っていました。

完全体ではないけれど完全体に近づきつつある元凶が、500m下流より登場。
そこそこ開けた場所で昼間から堂々と裸体を晒し湯浴みをするこちらに気づいて絶句している。
酷い字面だ。
文面だけでは、どちらかというと私が加害者だし、未成年のあちらは被害者だ。
そういえばファーストコンタクトでも、彼は私の半裸を見ている。

かわいそうに。


『……ごめんなさいね。すぐに服を着るから、ちょっと遠くの木々でも見つつ楽しいことを考えていて!』


温泉に入って心が平常と比べてかなりおおらかになっているため、本来であれば
「キャードスケベヤロウ!」
と叫んで然るべきところを逆に謝る始末だ。
それは良いとして、手ぬぐい片手に湯船から出ると、目の前に当のご本人がいると流石にのんびりもしていられない。
距離を詰めるのが早くありませんか。
物理的にも、精神的にも。

とはいえ、こちらの希望には応じてくれている。
距離は近いが、遠くの木々を見つつ、顔を少し赤らめてこちらの濡れた肩を押してくる。


「いや、邪魔をして悪かった。見ない。見ていない、が、詫びに見張りをしているから、ゆっくり暖まっていろよ……」


やだ……かわいい……
初めから怒っちゃいないが、全部赦した。




ネイキッド





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川辺風呂エンカウントです。
温泉はよいものですからね。



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