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すべての最優先は、君(マダラ+オビト)
(※ノイズィヘイジィ番外「馬鹿をぬかすな」続編)

当然のことではあるが、ヒトと比べてイヌの成長は早い。

この間までこーんな、私の腰くらいの大きさだったオビト君が、私の背を抜かすくらいの大きさになってやってきた。
身体は大きくなったがまだ思春期真ッ只中のご様子。
私の見る限りでは小学生高学年だった子が高校生になったように見える。ウルフドッグはカイイヌと比べて成長が遅いせいかもしれない。これがカイイヌであれば成長速度はこんなものではない。

あっという間に、


「おい、今度はどのくらい一緒にいられるんだ」


こうなる。

顔をすり寄せて優しく訊ねてくる大きいほうを

『そうだね……ちょっと待ってね……』

と押しのけてオビト君を見やる。


『お久しぶりだね。怪我しちゃったんだってね……』


変わったところは大きさだけではない。
何でも自宅のドッグランに入り込んだクマと格闘したとかなんとか……成犬ではないのに無茶をする。
顔の左が深く傷つき、痛々しい。


「お久しぶりです……でも名誉の負傷というか……護りたいものは護れたし、なんとか生きているので、問題はありません」


こちらとは目を合わせずに礼儀正しく応える。
本来ウルフドッグとはこういうものである。
慎重にして繊細、不必要に目を合わせてはこない。

大きいほうがガンガン目を合わせてくるのは、まあ、トレーナーである私の不徳の致すところだ。
お恥ずかしい限りである。

それはともかく。

今回は、今後の生活に影響がないためのケアが依頼だったが、話を聞く限り問題はなさそうだ。
しかし依頼人に

『話を聞く限り大丈夫そうです』

とは言えないので、とりあえず一通り決められたテストをしよう……と手綱を引くのにびくともしない。

オヤッ


『……どうしたのかな。とりあえず、トレーニングをしたいのだけれどな』

「……いえ、俺はもう大丈夫ですので、」


不穏な固辞だ。
なにかおかしい。よくよく観察していると、オビト君のすべての意識が、私ではなくその後方へ向けられていることに気が付く。
振り向く。


『いじめてはいけないと、前にも言ったのに、』

「待て。誤解をするな」


などと言ってはいるものの、先ほどまで逆立てていた毛がまだ戻りきっていない。
こちらが見えないところでガンガン威圧していたことは明白。

やはり彼のために用意した野球場のバックネットばりの高さを誇るゲージへ入れておくべきだった。
しかし以前、オビト君がまだもう少し小さかった頃にソレをしたところ、尋常ではない怒りを発し、オビト君をちょっと引くくらいボコボコにしたため、やむをえずの同席だったというのに……そもそもなぜこのタイミングで千手兄もこの子を預けるのだろう。
矛先が千手兄へ向かってしまう。

ぼったくってやろう。

ことの元凶はというと、眉間にしわを寄せて黙り込んだこちらに近づき、懲りずに再度顔を寄せて言い訳を始める。


「まあ、聞け。
そいつの躾は俺がした。クマにやられそうになったときに、クマに止めを刺し助けてやったのはこの俺だ。
そいつは俺に恩があり、かつオトナとしてのオシエを施した師でもある。
お前が教えることはもはや、無い。
よって、本来そいつに使うはずだった時間を俺に使うことができる。そいつが言いたいのはそういうことだ。
わかるか」

『それはそれ、これはこれだよ……マダラが年下の子にものを教えてあげたことは良いことです。偉いね。
でも、マダラが教えてあげられないことを、私はオビト君に教えてあげなければならないからね。あなたの時間はちゃんと取ってあります。その時にゆっくり遊ぼうね』


褒めつつたしなめ、言うことを聞かせようと、頬を寄せつつ撫でてから身を離そうとするが、知らぬうちに背中に回された手の力が強く思うようにいかない。

ふと冷静に現状を顧みてしまい、案の定具合が悪くなる私を尻目に、マダラは大きな尾を振りながら弟子に声をかける。


「そういうことだ。お前はその辺でウサギでも何羽か捕まえていろ。獲物によってはポメラニアンのリンとの仲を取り持ってやる」



すべての最優先は、



「バカッそういうことを大声で言うなよな!!!」


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