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忍者
シルエットが似ている(マダラ)
(※酸欠デイズ番外)

「凄まじいエネルギーを持った超獣が大都市を暴れまわる、という設定に興味があり、今後の人生において参考にしたいため」

などという、履歴書のような文言で映画に誘われた。

いつ?
どのようなあたりを参考に?

というようなことはあえて聞かないこととする。
以上を差し引いても答えはNOだ。
なぜなら、私はパニック系が苦手だから。それに、映画館はただでさえ音が大きい。私は大きい音も苦手だ。
珍しく娯楽に興味を持った様子なので、願いを叶えてあげたい気持ちはある。

だが、しかし、でもなぁ。


『……DVDが出てからでは、ダメなのですか』

「……は、」

『は?』

「迫力が、違うと聞く」

『迫力が……』

「ああ」

『それが、私は苦手なのですが……』


しかし私が苦手だろうとなかろうと、彼には関係のないことなのである。
俺がいるから大丈夫的な言葉をこちらは鼻で笑いつつ、インターネットの情報から憶測したストーリーを能楽師顔負けの動作で再現するなど駄々をこねたのだが、
無念、結局は渾身の演技を優しく褒められただけで、映画へ行くこととなってしまった―――……


……―――そして、ところ変わりに変わって映画館の席である。


「おい黒子、先のカップルチケットとは何だ」

『安く済ませる方便です静かにしてください』

「この飲料はなぜ一つの器に二つ飲み口があるんだ」

『どちらで飲んでもいいようにですよ。選択を増やすのが流行っているのです、さあどうぞ』

「適当を言うな。カップルチケットだからだろう。顔を突き合わせて飲むわけか。考えたものだ。方便だとしてもそれを装う必要があるのではないか。
……なるほど、音が響く構造なのだな。お前が怖がる理由もわかった。手を繋いでやろう」

『ポップコーン持たなければならないので……耳栓もありますし……結構ですから……私は寝ていますから終わったら起こしてください……』


と、言いはしたが、もちろんそういう訳にもいかない。

耳栓をしてもなお聞こえる音、振動、登場人物の冷静な分析や努力を覆す圧倒的力、論理的理由……

結局観てしまっていたし、
気が付いたら手を握るどころかしがみついていたし、
気が付いたらどさくさに紛れて逆隣りの知らないおっさんにポップコーン食われているし、
それに私は知らぬところであったが、実は映画へ誘ってきた野郎は途中から映画なんざ観ていなかったようだし、
本当にえらい目にあった。

終わっても脈拍は戻らず、落ち着くために呼吸を繰り返すことに集中していたため、帰り道も、帰ってからも、握られたままの手に気が付かなかった。

何度も申し上げるが、本当にえらい目にあった。
野郎は満足そうであった。



シルエットが似ている



「また行こうな、黒子」






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酸欠デイズ番外でシンゴ●ラを観に行く
というリクエストでしたが……私は……まだ……観て……いない……の……で……



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あきゅろす。
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