忍者
ピラニアは酸欠
(※「我が敵に捧ぐ鎮魂歌」番外)
家の掃除をしていると、ふいに肩に手を置かれた。
「子どもは三人でどうだ」
「庭はもう掃き終わったのですか」
何か言っていた気がするが聞き流し、与えていた仕事は終わったのか訊ねる。
うちは閑居して不善を為す。
そう考えたのだが、もっと大変な仕事を与えるべきだったかもしれない。
こちらの問いに頷いて、今度はマ●イ棒で引き戸の桟を掃除し始めながら言葉を続ける。
「考えたのだが、」
「集中して、丁寧にやってくださいね」
「衣食住を共にし、これはもう結婚しているに等しいのではないか。
あとは子どもだ。
先日書物で読んだぞ。既成事実と言うらしいな」
「そこ、埃が溜っていますよ」
「安穏に生活が続いている点からも、諸々相性は良いと言っていいだろう。悪いようにはしない。
それに、稼ぎは良いほうだ」
「汚れたマ●イ棒はこっちのビニール袋に入れてください」
「うちはの屋敷は広い……寝屋とは別に、黒子の部屋も用意しよう。奥座敷がいいかもしれんな……」
「他の部屋の引き戸もお願いしますね」
「柱間や扉間に自慢できる……あいつらの驚く顔を見るのが楽しみだ……ところで―――…」
別室へ向かいながらも話は続いているようだ。
何も聞こえない。
私は何も聞いていない。
ピラニアは酸欠
ヒエッ……白無垢の話してる……
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