忍者
馬鹿をぬかすな
(※「ノイジィヘイズィ」番外)
「オビトです!よろしくお願いします!」
「……はい、よろしくお願いします。よしよし…よしよしよしよし……」
「ありがとうございます!ありがとうございます!」
マダラに加え、今回は子犬を預かることになった。
子犬ならどうにか……犬に見えると思ったが、そんなことは全くなく、なにやら純朴そうな、それでいてどことなくマダラに似ている、とてもかわいらしい男の子に見える。
元気いっぱいだ。
目がきらきらしている。
尻尾をぶんぶん音が鳴るほど振っている。
かわいい。
かわいい。
感情に任せて可愛がっていると、気が付いた時にはないがしろにされていた成犬が横に立ち、子犬の襟首と腰を掴んで強制的に側転させるようにブン投げた。
ブン投げられた子犬は堪ったものではない。
しかしそこは同種、身体能力も高いらしく、
「ギャッ」
と叫びながらも地面に落ちる前に体勢を立て直し、ぷるぷると首を振りながら異議を唱える。
「何しやがるジジイ!クソジジイ!」
「お前が悪い。全面的に」
相手が子犬でも容赦のない、理不尽な嫉妬と怒りをぶつける。
「こら、子ども相手にそのようなことを。悪いことをした時ならばともかく、なにも悪いことをしていないのに、いぢめてはならないよ」
と、たしなめるこちらの言葉も半分くらいしか聞いていない。
私の頭をほっぺ置きとでも思っているかのように、頬をすり寄せ撫でろの要求だ。
「だめだよ、悪い子のことは撫でられないな!」
ダメな時はダメと教えるのもトレーナーの務めである。
すり寄る身体を押しのけて叱る。
彼は頭の良い子なので、一度叱られれば反省をし、二度と同じ過ちは犯さない。
しかし、どうやら今回は思うところがあるらしく、距離を置こうとするこちらの腰を抱き寄せ反論を開始した。
「違う!俺は悪くない!
どれが自分のモノで、先に愛でられるべきは誰かを、新入りに教えるのは俺たちの性分だ。お前もよくよく解っているはず。叱られる道理がわからん」
なるほど、確かに。
言い分はもっともだ。
しかし、根本的意見の食い違いが見られる。
「でもこのヒトはアンタのモンじゃねえだろ!」
キャンキャンとマダラの脇腹に突進をして、ナイトを気取ってくれる子犬のいうとおりである。
それに、斯様な性分を理解していたうえで、オビト君の訓練中は、マダラをドッグランが見えない場所へ待機させていたというのに……華麗に塀を乗り越え脱走した身で何をぬかしやがる、という感じだ。
全部を棚上げし、脇腹の子犬に再び容赦なく巴投げをキめ、仰向けでキュンキュン鳴く反論者に吐き捨てる。
「馬鹿をぬかすな」
「コレは俺のモノだ」
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