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主な死因といえば愛情です

戦ばかりのこの時勢、信じられるのは血の繋がった一族だけと教えられて育ってきた。

一族と生き、一族と死ぬ。

よって、私たちの世界は一族といって過言でない。
しかし、その世界は、ちょっと元気溢れる性分の私には狭すぎた。

元気いっぱい、こっそり隠れて家族に内緒で集落抜けて、外に遊びに出たのが六つのときのことだ。

こっそりと、背中に一族の紋を背負ったままで。

連れ戻しに追いついた母が起爆札のトラップで破裂し、トラップ起動を合図に集まった異世界の輩から私を庇った父の背からいくつもの剣先が飛び出た。

そんな状態でも逃げられずに一歩、両親のほうへ足を踏み出した私の背を掴み、強制的に後方へ投げ飛ばし、倒れゆく父の手からこぼれたクナイを地面へ落ちる前に掴んで敵を殲滅したのは、
三軒お隣の族長の家の、三つ上のオニイチャンだった。

頬の返り血を拭って振り向いたオニイチャンは無表情で一言、


「帰ろう」


というような内容のことを言ったように記憶している。


「いやだ」


動かなくなった両親はもう元に戻らないことはさすがに六つでもわかっていたが、置いていくことで、死別よりも遠くへ行ってしまうような気がしていた。

自分がわるいことをしたことも、わかっていた。

一族を一人殺されたら、相手も最低一人殺せと、教えられて育てられていた。

両親を殺したのは自分で、二人分とはいかないまでも、自分も死ぬのは当然という気持ちでいた。
……それも、言葉に出すだけの語彙力は無く、阿呆のように薄く口を開けて手を引いて無理矢理立たせようとする彼を見上げるばかりだったが、そんな私に彼は途方に暮れたように、


「頼む」


と言ったのだ。

思い出せるのはここまでで、そのあとどうやって集落まで帰ったのかは覚えていない。
べらぼうに叱られ、お仕置きを受け、両親の遺髪だけ入った墓を作るなど、やらねばならないことが山のようにあったからだろう。

ぼんやりする間もなく、戦いの日々は続き、私をべらぼうに叱った大人たちもみんな死んだ。
それでも最期まで、なにかと気を配ってくれたオニイチャンも、もう立派な族長サンである。
わるいことをした手前、その後は大人たちのいうことを聞いていたが、彼にはわがままを言うことが多かった。

甘えていたのだ。

それに大体のわがままを許してくれた。
困った奴とため息をつきながら、でも、本当に困ったときには「頼む」と言うのだ。
頼まれては仕方がないので、言うことを聞くしかない。
それを彼もわかっているので、この「頼む」はもっぱら、最終手段として用いられた。

まったく、どちらが振り回されているのかわからない。

ほら、でも、一族よりなにより大切な弟が怪我をして撤退余儀なくされている今、囲まれ迫る敵を相手のシンガリくらいは、どうか、せめて、任せてちょうだいな。
背中を掴んで強制的に後方へ投げ飛ばし、地面へ刺さる弟君の刀を掴んで敵を、殲滅、は、さすがにできないけれど、


「戻れ頼む」


と叫ぶあなたに



主な死因といえば
愛情です


「いやだ」と笑って意趣返し



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