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感情には添わない(マダラ)

「クーリスッマッスッがッこッとッしーッもッやーッてッ来るッ♪」

「うーれしいッこッとッ♪」

「たーのしいッこッとッ♪」

『消ーし去ッるッよッう…に……』

「……。」

「……どこかで間違えたようだな」



感情には添わない



瀟洒なオーベルジュの一室に集まった独身三人組の我々は、数年前の今日、悲しく街を歩いていたところをうっかりぼったくりゲイバーに連れ込まれた際に出会った。
「さみち●ぽ会」などという狂気の場で、我々は被害者意識からか奇跡的に意気投合をし、「もう二度とぼられないよう、「この日」に予定を入れる」……ただそれだけのために、所帯を持つまで毎年集まることとした。
いまだに誰も所帯を持てずにいる。


『しょっぺえ話だわ。両人、造形は良いので、こんな集まりすぐに解散してしまうものだと思っていたのに。性格に難在りの物件なのかしらん』


呟き、大げさに頭を振りながらシャンパンを一気に飲み干すと、円卓左のうちは氏が応戦してきた。


「おい、大きく振りかぶって投げたブーメランがそろそろ返ってくるぞ」

『くそ……自分の言葉でこんなにダメージを受けるとは努々思わなんだ……テリーヌすら喉を通らない』

「介護をしてくれる相手も居まい……この調子で老いて弱ってゆくくらいなら、いっそ肉を咽喉に詰まらせて一息にくたばったほうが良いんじゃあないか」

『うちはさんもずいぶんと大きく振りかぶりましたねぇ!』


お互いがお互いを精神的に煽りながらグラスは手前のものを煽って、空いた相手のグラスには容赦なく酒を注ぐ。
楽しい食事会というよりは潰し合いに近い。
普段であれば、ここらで円卓右の千手氏が仲裁に入るところだが、何やら上の空。
それに気づいたうちは氏が、こちらに対する時とはえらく違う、優しい声で言葉をかける。


「どうした柱間。どこか悪いのか。無理をするな」

「いや、身体は、生まれてこの方、風邪を引いたこともないので問題ない!そうではなくてな……」


サラッととんでもないことを言っているが今はとりあえずおいて置くとして、明朗快活な千手氏が珍しくもごもごと言い淀んでいる様は、こちらとしては不安でしかない。


『どうしたの……お金の問題以外であるならば、手を貸せるわよ……』

「言うだけ言ってみたらどうだ」

「おぬしら……」


珍しく見せる我々の友人らしい雰囲気に感動し、目を潤ませた千手氏は、一度グラスを空にしてから、意を決したように爆弾をブッ込んできた。


「結婚をすることになった」


静寂。

意味を解するのに3秒、
呆然とすること2秒、
何と返すのがベストアンサーなのか考えるのにまた2秒、

とりあえず、ここは、うちは氏の反応を見てから第一声を発するのが良いという結論を打算機は叩き出した。
視線を右から左へスッと移すと、色を無くし、とてもではないが私以上の論理的思考ができているとは思えない状態のうちは氏を見とめてしまった。
こいつ大丈夫か。
流石に心配になったので、テーブル下で足を突こうとしたところ、やっと口を開き、言葉を発しようとしているような動きを示した。
しかしそれが、声は出ていないが「てめえこのやろう」系の唇の動きであったため、フォローに徹するがベストとみて行動を開始する。


『おおおっとうちはさん、ここは「おめでとう」!「おめでとう」の声掛けがベストよ!人間としての器が試されますよ!寂しいけれどめでたいことだわ!ちくしょう!おめでとう!おめでとう千手さん!!!』

「ありがとう黒子殿!」


勢いで空気を変えようと、おどけつつ久々に大きな声を出す。
ホッとしたように私に笑いかけ、祝いの言葉に礼を返してくるが、安心するのはまだ早いぞ千手!
微妙なところで鈍感である彼は、いまだ動じて声も出せないもう一人に気が付かない。
私の努力も空しく、声が復活したうちは氏がテーブルに拳を叩きつけて怒号を挙げた。


「人の器なんぞ、知ったことか!」


シャンパンをぶちまけながら叫ぶ。


「体裁もクソもあるか!ちくしょう!今日は俺の誕生日だぞ?!お前も俺を裏切るのか柱間ァ!」


その言葉を発するに至った気持ちはよくよくわかる。
だが誕生日は特に関係が無い。
再度訪れた静寂をどうすべきか、生唾を飲みこんだとき、「誕生日」という単語が合図となって運び込まれる算段になっていた、誕生日ケーキがやってきた。


『……お、お誕生日おめでとう……』


ケーキに刺さった花火が、バチバチと弾けている。



(2014/12/24 happybirthday)


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あきゅろす。
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