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忍者
真夜中の向日葵畑(マダラ)
(※我が敵に捧ぐ鎮魂歌番外)

余所の子の成長は早いと聞く。
“子”に限らず、私を置いて周囲はどんどん成長して、私の山も気が付くと立派な忍里となっていく。
顔見知りの子どもたちは殺し合いの応酬をしながら心も身体も所々擦り切れつつ大きく成って……守るものも増えて……
ずいぶんと立派になって……
立派になってしまって……

人里で共に暮らそうと言ってくれた元、子どもたちに


『しゃ、社会性を徐々に取り戻しつつ……ゆっくり順応していくから……それまで森で暮らします……』


と怯えた獣のような断り方をし、森と里のあたりを花など植えたりしながらふらふらと暮らしている。
社会性だなんだと言っているが、里ができる前から峠を越えていく通行人とコミュニケーションを積極的にとっていたため、そんなことは問題ではないのだ。
問題は他にある。


「……向日葵、きれいに咲いたな」

『そ、うでしょう……何本か、イズナ君へ持って行っても構いませんよ』


言うまでもない。彼だ。
もう本当に、どんどん私の知るアンチクショウに成っていく彼にいつでも会える場で暮らすことのストレスに耐えられないのだ。
見た目のみであれば我慢のしようもあった。
だが、弟が亡くなった頃、というよりも里が成熟してきた頃から様子がどんどん……アンチクショウ寄りに……
急激な接近となつき度アップ、というやつだ。
憔悴しきって崩れ溶けてしまいそうな彼を見かねて、安易にもこの世に抱き留めてしまったことが原因か敗因か。

怯えた私はひとまず距離を置こうと努めているわけだが、アンチクショウレベル1状態の彼は仕事など忙しかろうに、暇だからちょっと寄ってみました、のノリで時間が少しでも空けばやってくる。
先日など、森の奥、人が来ることも無いような木陰で一人昼寝をしていたはずが、目を覚ましたらうちはさんのおうちだった、ということがあった。
やってくるだけではなく、やってきて攫うのだ。
やってきて攫う、という字面がアウト。
やってきて攫われた結果、ナウ、だ。
レベルは日々上がる一方。


「そうしよう。イズナだけではなく、他の奴らも喜ぶだろうからな……お前の花は永く保つ。ところで俺の家の庭に今度花壇を作ろうと思っているんだがそこで育てちゃ貰えねえか住み込みで」

『へぇえ―?!いやあ、花の保ちが良いのは、ここの土や日当たりの環境が良いからよ……もともと専業ではないし、プロに頼んだ方が良いのではないかしらん……ほら……柱間君なんか……趣味が盆栽とか……そんなんだったような……』

「そうか。まあそんな花壇なんぞは正直どうでもいい。俺はお前をそばに置きたいだけだからな……お前だってその方がいいだろう……俺のそばに居れば、何か怪我をしたときにすぐ治すことができる。持ちつ持たれつだ」

『いいよう……構わないでよう……怪我なんぞ滅多にしないし……こうやって時々会いに来てくれるだけで私は十分だよう……私は森で、マダラは里で暮らそう……?共に生きよう……?』


アンチクショウに比べ若いせいか、若さでぐいぐいくるのでしどろもどろになるのは致し方のないこと。
押される恐怖で後ずさりし、本気で逃げる準備をしようと心に決めた瞬間、太ももにクナイが刺さる。
痛み、というよりも衝撃でバランスが崩れこけそうになるが、周囲の向日葵が蹴倒されたかと思うと、クナイをノーモーションで放った野郎本人が身体を抱えるように支えを入れる。


『!』

「……ほら、お前はすぐに怪我をする……太ももか。あともう少し深く、内側であったら……出血はもっとひどかろう……ここから里まで歩くのはむつかしいな……いざという時では遅い。すぐそばに居たとしてもどうにもならないことがある……イズナのように……なあ、お前を心配しているんだ……わかってくれるだろう?」


なんて言いながら刺さったクナイに手をやって力を込めるのだから、とんでもない。
怖すぎる。


は や く 起 き な け れ ば


向日葵が散る。





真夜中の向日葵畑


うっかり昼寝したままで、気が付けば周囲は真っ暗だ。
焼け爛れた山の斜面に、誰かが酔狂にも花を植えたというので見に来たら思いのほか美しく居心地が良かった。
戦はまだこれからもしばらく続き、子どもたちが大きく成るまでまだ時間がかかることだろう。





(月夜さんへ)


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