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忍者
青光りの速さで(マダラ)
(※「我が敵に捧ぐ鎮魂歌」番外)

熱帯地域のようなスコール到来。
雨音もすごいが、地面が震えるほどの轟音を響かせ、ひっきりなしに近くに落ちる雷もすごい。
これでは深夜の野郎の侵入に、いつも以上に気づくのが難しい。しかし、この季節に部屋中閉め切って眠るのもつらくなってきた……早く元の居場所へ帰ってくれないかな……
自分の力ではどうにもしようがないことを考えつつ、手早く寝支度を整える。
野郎は現在入浴中だ。
毎晩このわずかな時間に、寝間着に着替え、部屋中のセキュリティを強化する。
しかし寝間着にしている長襦袢を肩にかけた瞬間、カッと障子を稲光が照らし、今日一番の爆音を落とすと、今度は部屋の明かりがブツッと音を立てて消えた。

基本的に大きな音が得意ではないため、まずはじめの爆音に驚き竦んだのち、つぎの停電の音で唾を飲み込む。
判断力が少し鈍っている自覚はある。

とりあえず、とりあえずどうすればいい?

……懐中電灯か。

居間にしまってある懐中電灯を取りに行くために、暗い中を一歩踏み出すが、肩にかけただけで整えることも帯を締めることも忘れていた長襦袢が足に絡まりバランスを崩してしまった。

うかつ。

このまま倒れると障子戸が悲惨なことになったうえ、今後の生活や心の安寧に支障をきたすしかしもう方向転換は無理である大人しく倒れるしかないのか無念!
―――…衝撃と破れる障子戸を覚悟していたが、私を受け止めたのは障子戸ではなくちょっとしっとりした何かであった。


「ずいぶんと近くに落ちたようだが……大丈夫か」


すでに判断力は平常値に戻っているため、瞬時に現状況から最終的にもっともダメージが少なく済む返答の選択肢を挙げる。

『助けてくれてありがとうございます』→BADEND
『ちょっと、服ちゃんと着てます?』→BADEND
『身体まだ濡れてるではありませんか!ちゃんと拭いてください』→BADEND

駄目だ、どれを考えてもBADENDというかBEDINというか、ご察しください、な結果しか導き出せない。
冷静になろうとすればするほど今の状況のヤバさ理解しか進まない。
相手は半裸もしくはほとんど全裸もしくは全裸、こちらはパンツに襦袢羽織っただけつまりほとんどパンイチ。
停電していてよかった!私には見えない!嘘!よくない!野郎には見えている!全然良くない!

考えばかりが巡り巡って何も言葉を返せずにいると、頬を両手で包まれるようにして撫でられる。


「こんなに震えて……雨も雷も、まだ止みそうにないな……今夜はそばで寝てやろう……肌を合わせていれば恐ろしいこともあるまい……」


あんたが怖い。

そう返す間も無く抱き寄せられそのままアッ――――――――――――――――――!






『―――――――――ッ夢!!!!!』

「ウワッ」

「!?」


気力で起床。
大きな声を出して飛び起きたため、近くで水切りをしていた子たちを驚かせてしまった。
片手をあげて謝罪の意を示しながら息を整える。


「……大丈夫か。顔色が悪いぞ」


眉をひそめながら様子を見に近づいてきてくれたが、その顔は今の私にはちょっと刺激が強すぎるため、見ないようにうつむきながら言葉を返す。
大丈夫、言葉を返せる。


『ちょっと、おそろしい夢を見てしまって……大きな声を出してごめんね……本当におそろしい夢だったのよ……』





青光りの速さで


『あなたはお願いだから、ゆっくり大きくおなりね……ゆっくり……あっ、大丈夫だからあまり顔を覗き込まないで』






(磯さんへ)





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あきゅろす。
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