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忍者
愛しているから黙れ(マダラ)


「お前たちは兄弟だろう。よって結婚はできまい」


古い友人に婚約者を紹介した際の、彼の第一声である。
もちろん婚約者である扉間と私の間に血縁関係は無い。
友人とは就学前からの縁であり、お互いの家族構成や忘れたい恥ずかしい過去まで知っている仲だ。お互い一人っ子ゆえ、昔からよく一緒に遊んだではないか。


『何を言っているの、マダラ。まだワイン一杯でしょう。もう酔ったのかい?』


茶化して和やかな空気を取り戻す努力をしたが、酔っぱらっているにしてはマダラも扉間も顔面蒼白だ。
照明のせいかな?
せめて料理が来れば……この微妙な流れを断ち切る糸口となろうに……マダラは幼年より時折わたしを「柱間」と呼び身に覚えのない思い出話をすることがあった。いかつい顔して不思議ちゃんなのだ。そういうところもキュートな自慢の友人へ、一番初めに結婚の知らせをしたかっただけだというのに、どうしたことか。


『料理まだかなァ〜早くお肉が食べたァい…』

「俺が先に出会ったのだぞ。現世では女だというからめおとになれようと……計画していたのに……それを後からのこのこ現れたお前になぜとられねばならんのだ。相変わらず憎らしいツラしやがって」

「黒子は、兄者ではない」

「ぬかせ」

「俺が現世での兄者の行方を調べないとでも思ったか。兄者は現世、アマゾンの奥地で先住民の長をしておるわ。楽しそうだったぞ」


なぜ会話が成り立っているのか。
現世とかアマゾンとか何の話だ。この状態でなぜ私が置いてけぼりなんだ。


『扉間、あなたは長男でしょう。兄者って…』

「それに、お前が黒子を兄者だと思ったうえで好いたようだが、俺は黒子を黒子として好いているのだ。ゆめ忘れるな」

「お前にこいつのことがわかるわけがない。俺と共に生きるほうが、こいつの幸せに繋がる」

「だがお前にとって残念なことに三か月後には式を開く。お前を招待するのは危険かもしれないな」

「ほう、まだ三か月もあるのか。教えてくれてありがとよ」


ここで前菜が到着したため一時休戦。
食べつつ会話内容を思い返し考えてみるがさっぱりわからない。二人とも顔見知りだったのだろうか。そういえば、友人の名前が「マダラ」だと教えた時、扉間の眉間のしわが当社比2ミリ深くなったような気がする。
お互い顔見知りであり、なおかつ折り合いが悪いならば、このような事態になることはわかっていたはずだ。なぜ事前に言ってくれなかったのか。
私がサプライズにしたいからとごり押ししたからだろうか。
ごめんね。


『ぜ、前菜からおいしいねぇ。ところで二人は…』

「まったくてめぇは前世も前々世も前々々世も俺の邪魔ばかりしやがって」

「お前の危険で過激な思想が何度生を繰り返しても治まることを知らんからだ」

『前世ってちょっと…』


会話内容が前菜以前以上に危うい感じになってきたため、双方を落ち着かせようとすると、同時にこちらへ顔を向けられる。
眼が据わっている。こわい。


「黒子、悪いがいま大切な話をしている」

「そうだ。お前の幸せにもかかわる」





しているから
黙れ







(アヤメさんへ)


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