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HAPPY Birthday

日頃、あまり生き物から好かれないため滅多に得られないモフリ欲を満たしたことにより、私は相手が本当は何者であるかは二の次として

“ペットのいる生活”

を謳歌していた。


台所で食事の準備をするときも、

掃除をするときも、

トイレへ行くときも、

常に後ろに尻尾を振りながらついてくる姿は平生の姿であればゾッとするものでしかないのに、今の姿だといとおしい感情しか生まれない。


「もう…ずっとこのままで良くはありませんかね…?」


テレビの音をBGMに、あたたかで少し獣臭い胴体を枕にしながら微睡む、この幸福よ…

独身者がペットを飼うと、もう結婚できないときくが、なんか…もう…いいんじゃない…?
飼おうよ…
幸せになれるなら…


幸福は時として思考を止める。

今の状態の私はまさにそれであった。
よって枕が微睡む自身の上にマウントポジションをとっても、深く考えずに


「どうしました?お腹でも空きましたか」


などと呑気なことを言いながら、あまつさえその首に腕を回して抱き寄せちゃったりなんかしちまったのである。

抱き寄せられた彼は、スッと目を細め、犬が甘えるときのような素振りで鼻先をこちらの首もとにすり寄せ

首から唇にかけてベロリと舐め上げた。


「ぎゃッ」


とっさに平生通り投げ飛ばそうとしたが、いかんせん、でかい犬なのでうまくいかず、逆に押しつぶされてしまい更に身動きがとれない。
動けない私をよそに、わんころは首やら口やらを一通り舐め、

最後に口を甘噛みした。

瞬間、愛しのペットは消え去り、警戒すべき野郎へと姿を戻してしまった。

キスで魔法が解けるとは…


「………なるほど、お約束ですわな…」


余裕ぶってはみるが、脳内では警報鳴りやまぬ状態なので、声も身体も震えてしまう。

一方マダラさんは、急に元に戻ったことで、驚きながらも喜び、またほっとしたように息を吐いて、先ほどと同じようにこちらの首へ顔を寄せる。


「…まあ確かに、あの姿も悪くはないと思ったが」
「この姿も、黒子が言うほど悪くないだろう…?」





HAPPY Birthday


「抱きしめられるのも、やぶさかではないぞ」







(2012/12/24)

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