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海賊
そらとぶくじら(親父)

「世界の海を全て航海し終えたら、今度は空を旅しましょう。
空なら海軍も居ないから、きっと今よりのんびり旅ができるでしょう」


自分の何倍もある大きな手にすがりながらそう言うと、
親父殿はいつもグラララと笑いながら頬を撫でて下さる。


「のんびりってのも良いかもしれねぇなァ。
息子共には物足りねェかもしれねェが…」

「親父殿と一緒ならば、皆さん文句を言ったりはしませんよ。
“空”は景色も良いことでしょう。良い酒が飲めるかと」

「そいつァ魅力的だな…」


本気で思案顔になった親父殿にきゅんとするのは致し方ないことだ。
この船に乗る者であれば皆、きゅんとするに違いない。
親父殿にそんな顔をさせる酒になりたい。


「親父殿が海賊王になるまでに、私が必ずモビーディックを空へ浮かべます。
そうして皆で宴をしましょう。
下から喚く海軍を皆で笑ってやりましょう。
約束ですよ、必ずですよ」

「ああ、わかった。必ずだ…
楽しみにしてるぞ、黒子」


親父殿との約束。
親父殿が楽しみにしてくれている。

海賊が空に浮かぶなんておかしいかもしれないけれど、
皆で阿呆な海軍を肴に飲む酒はきっととても美味いことだろう。
皆と楽しめればそれで良い。
おかしいと言われても構うものか。

そう思って、必死に勉強して、実験して、完成まであと一歩だったのに、

くじらは私を置いて先に空へと飛んで行ってしまった。




そら




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あきゅろす。
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