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海賊
此岸にて、深呼吸(エース)
(※現パロ)

公道を渡り、雪の積もった田畑の畦道を行き、もう使われていない桑畑を抜けた先に、このあたりの産土神社がある。
例年は街の大きな神社へ初詣に行くけれど、今年はなんとなく億劫になってしまったので、近場で済ませることにした。
日の変わる頃には神楽や餅撒きをして賑わった境内も、日の出を過ぎてしばらくすると静かなものだろう。地元の知人に会うと長くなるので、できるだけ会わない時間帯を選んだ。

御手水で清めてから、狭い凍った階段へ滑らないように気をつけつつ、足を踏み出す。


「あっ」


足元ばかり気にしていたせいか、降りてくる人の気配に気づけなかった。
手すりを掴んでから見上げた先には、久しくもない、高校から大学までついてきた後輩の姿があった。


「なんだよ、黒子も、こっちに戻ってきてたのか!」

「ポートガス君」


言ってくれよ、一緒に帰省できたのに、と白い息を吐きながら駄々をこねるような顔は、鼻や耳の先が赤くなっているからか、年齢より幼く見える。
もこもことしたダウンジャケットの上に、神社の大世話人が着る法被を羽織って、手には水桶を抱えている。

ちょっと良いティッシュで鼻を拭ってやりながら、疑問を口にする。


「どうしたの、もう、大世話人の当番が回ってきたの」


この神社は、普段無人だ。
年毎に祭事を当番で行う。
若衆が小世話人を行うことはあるけれど、大世話人は仕事を退職した方々が務めることが多い。


「いや、本当はウチのジジイに回ってきてたんだけどよ、雪下ろしで腰をギクリとやっちまって……代理大世話人だ。お見知りおきを」

「なるほど、ご丁寧にどうも」


互いに深々お辞儀をし、彼が御手水近くの湧き水から若水を汲んでくるのを待った。

神域の森、木々の隙間から見える新年の日光を浴びて深呼吸をすると、野暮を言えば月が替わっただけなのに、なにやら厳かな気持ちになるから不思議である。

駆け足で戻ってきたポートガス君を、今度は見下ろしながら、そういえばまだ、肝心な挨拶を済ませていないことを思い出す。


「明けまして、おめでとうございます。お誕生日おめでとう」






此岸にて、深呼吸





「良い天気になってよかったねえ」





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Happy birthday!20180101



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