海賊
膝の擦り傷(学パロ)
やっと放課後である。
最近一日が濃くて長い気がする。
イヤホンを耳に突っ込んで贔屓のバンドの新曲を聴きつつ、下駄箱から靴を取り出そうとした瞬間、脇からタックルを食らった。
「うっ」
受身など取れる訳もない。
床に膝やら肘やら頭やらを強かに打ち付け、衝撃でイヤホンが外れた。
痛みに悶える。
西陽が射し込む玄関ホールでの犯行であった。
膝の擦り傷
タックルで腰に組みついたまま離れない襲撃犯に
「タックルは…タックルは無いよポートガス君…」
と力なく呻く。
するとなぜか、攻撃を受けた私よりも力なく切ない声で
「黒子のバカ…さっきからずっと呼んでるのに…」
なんて言い返してくる。
元気の無いこの子なんて珍しい。
いつもより下にある後輩の顔を痛みを堪えて覗き込むと、ふて腐れたように口をすぼめているものだから思わず笑ってしまった。
声に出さないようにして笑ったのだけれど、腹の振動で笑ったことが解ったらしい。
腰にまわされた腕に力が入る。
苦しい。
「うっ、ご、ごめんね…イヤホン着けてて、黒子先輩、気がつかなかったよ…」
タックルを受けバカ呼ばわりされたにも関わらず殊勝に謝ったというのに、力を抜く気配がない。
このままでは内臓が口からでろりと出てしまうかもしれない。
そんな大惨事は断固として阻止したい。
「ポートガス君…悪かったってば…今度から気を付けるから…何、そんなに大切な用事だったの…?」
「…頼みがあって」
当初の目的を思い出したからか、腕の力はだいぶ弱まった。
もう一押しで、腕が外れる。
「頼み?…私にできることなら、頼まれても良いけれど、なんだろう?」
なるべく優しく問うと、きらきらとした目でバッと顔を上げるものだから、先程とは違う意味で「うっ」ときた。
「週末、ちょっと付き合ってくれよ!」
やられた。
(旧「世界の中心は僕」)
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