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海賊
不平等条約(鰐)

※逆トリ設定








大学からの帰り道、おっかないオジサンに絡まれた。


帰宅中に誰かに絡まれるなんて、今までに無いことだ………だって私、車通学だもの。

黄砂の時期は過ぎた筈なのに愛車には砂の風が当たり細かい傷がつく。
この不条理に悲しみを募らせながら運転していた。

一際強い風が吹いたかと思うと砂嵐の中にいるような状態になり、事故りかけたのでウインカーを出して路肩に止まることにしたのだ。

すると、砂が運転席側の外に集まりだし、ヒトの形になってゆくではないか。


すごい、ハムナプトラみたいだ。


………………なんて思っていると砂だった人は身体を屈めて窓ガラスを華麗にノックしてきた。随分と大柄な人だ。

開けたくない。

顔に傷があってオールバック………………どう見ても堅気じゃあありません本当にありがとうございます。
しかし私の生存本能的な何かが


「すなおにあけないと、ころされちゃうかもしれないね!」


と言うので素直に窓を開ける。



「…お嬢さん、火を、いただけませんかね」



口調は丁寧だが隠しきれない横柄さ。
チキンな私は大人しく車内に付属されているライターを差し出すが、火を寄越せと言った本人は葉巻をくわえたまま受け取ろうとはしない。

………………点けろと?
初対面の私に、火を点けろと?

渡す格好のまま固まる私をちらりと見下ろすその様に、私の生存本能が


「すなおにつけないと(ry」


と言うので、大人しく窓から身を乗り出し葉巻に火を点けた―――――次の瞬間、首に何かを巻き付けられ引き寄せられた。


「うえっ」


どうやら“何か”はこの人の義手のようだ…かぎ爪を義手にするだなんてまるでフック船長みたいだ。

………………なんて考えている内にどんどん引き寄せられる私の身体は、もう半分が車の外に出てしまっている。たすけて。



「お嬢さん、俺はどうやら、異世界とやらに来ちまったようなんだ…笑えるよな…」



何を言い出すのかと思えば、突拍子もないことをおっしゃる。
…まぁ、砂になれるような人なのだから別段驚くような内容ではないか。

それにしても、笑えるよな・って…とりあえず、笑ったら私の首は胴体と生き別れするということは良くわかったので無難なことを返す。



「そ、れは大変ですね!しかし、どうしてご自分が異世界から来たということが解ったのですか…?」



私の質問には応えずに、彼は反対車線に目線を送った。
その先には、砂に埋もれた一台の車………………

なにあれ、こわい。



「ご親切に“貴方はこの世界では本の登場人物なんですよ!”と教えてくれてな…にわかに信じられねえ話だったもんで、ついカッとなっちまった…」



なんだその理不尽な仕打ち。
だが今の私には埋もれた車の持ち主を心配してさしあげる余裕がない。
明日は我が身というか、五秒後は我が身かもしれないから。

その怯えを知ってか知らずか、砂の人は実にビジネスライクな提案をしてきた。



「まぁそんな訳で、今の俺には生活する場が無ぇ…しばらく世話にならせてくれりゃあ…」




命くらいは助けてやろう
(なんという不平等条約!)





ノウラさんへお礼返し!
鰐さんが降ってくるといいね


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あきゅろす。
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