「おまwwwwそれwww初日から何やってんすかwwww」

 学園内で一番大きい中央ホールで入学式は行われる。工藤先生に礼を言って保健室から真っ直ぐその場所に向かう途中、廊下で同級生であり二年間同じクラスだった中村と獅童に鉢合わせた。
 中村は俺の頭に巻かれた包帯を指さしてゲラゲラと笑う。こっちに唾吹くな。しかも開口一番にこの野郎。髪の毛をオレンジ色に染め、黙っていればバンドでもバスケでもやっていそうな爽やかなイケメンの中村だが、実はかなりのオタクでありオツムと口元は緩いことで有名である。

「どうしたんだその頭、大丈夫なのか?」

 長身でありかなりの強面で、頭は坊主という厳つい容姿の獅童だけが真剣に心配してくれた。こう見えてかなりの心配性で優しい男である。中村の反応の後だから尚更嬉しい。
 一年の頃からずっと同じクラスだけあってこの二人とは特に仲が良いほうだと思う。クラス変動が激しいこの学園でずっと同じクラスというのはなかなか難しい。変動云々の説明はまた後ですることにしよう。

「あー…頭は、ちょっとな」
「ちょっとってレベルの傷じゃないだろう」
「ああ、えーっと、昨日部活の帰りに思いっきり後ろにひっくり返って石に頭打ち付けちまって」
「これが本当の石頭wwってかwwww誰がwwwうまいこと言えとwwww」
「はいはい面白い面白い」

 笑い転げる中村を獅童が窘め、俺はそれを見て呆れたり笑ったりするのがいつもの日常である。だがしかしここまで爆笑されるのもなんだかちょっと物哀しい。…まぁ中村だしな。

「夏休みマダー?www」
「春休みが終わったばかりだって言うのに何を言ってるんだ」
「そうだぞ中村、宿題は終わってるのか」
「俺のwwかーちゃんかよww獅童はwwwあ、田中様宿題写させてくださいww」
「え? 何? 聞こえない」
「ちょwwwwww」
「何最初から頼ろうとしているんだお前は!!」
「田中が最後の頼りだったのにwwwwwうぇっwww」

 両隣でまるで母親と子供、もしくは教師と小学生のような会話が繰り広げられ、久しぶりのこの喧騒に思わず笑ってしまう。たった二週間程度の休みだが、どうやら内心この空気が恋しかったらしい。
 まるで昨日の事件のほうがよっぽど非現実的な感じすらする。ああそう言えば、入学式が終わったら生徒会室に行かなきゃいけないのを忘れていた。…サボったら駄目だろうか。

「…た、田中先ぱ、い」

 この声、どもりがちな話し方は。
 勢い良く声がした方向へと振り向くとそこには昨日と変わらずひょろりとした出で立ちに、もさりとした黒髪、野暮ったい眼鏡をかけている新入生が立っていた。

「因幡! おはよう」
「お、おはよう、ございます」


 


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