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GEASS
スキ通るようなスキを






あぁ零れてゆくよ。
抱えきれないくらいの愛しさが。






「良かったのか?」

ルルーシュが去ってすぐ、まるで計ったように現れた緑髪少女がスザクに尋ねた。

「良かった。本当に」

「奴は、お前の望みを叶えようとしたんだぞ」

試すように彼女は微笑んだ。すると全く同じ笑みをスザクも浮かべていた。

「僕は彼と友達になりたかっただけなんだよ。きっと」

友達は、友達の幸せを願うものだろ?
スザクは嬉しそうに微笑んだ後、大きく伸びをした。

「彼と出会えて本当に良かった。もう二度と会えなくても、僕は絶対彼を忘れはしない」

祭殿天井を見上げる。
吹き抜けから燦々と太陽の光が降り注いでいた。
眩しいと、空が青いのが綺麗だと、スザクはココへ来て始めてそう思った。

「それは、どうかな?」

「………?」

「あいつの最後の願い、お前は知らないだろう?」

少女は妖艶な笑みを浮かべ、スザクの鼻先へ顔を近づけた。

「君は知ってるのかい?」

「あぁ。私は、C.C.だからな」





ジングルベルが鳴り響く街中を、ルルーシュは大股で闊歩していた。

「まったく……どうしてクリスマスにはこう街が混むんだ……」

文句をぼやきながらも、真っ直ぐに大通りを歩いて行く。
ルルーシュが向かう先は街で一番大きなスーパーマーケット。
パーティーのご馳走とケーキの材料を買うためだ。
そのためルルーシュは客引きをするケーキやにも、いちゃつきながら歩くカップルにも目もくれず歩いていたわけなのだが、

「おい。邪魔だ。どけ」

突然彼の目の前に『特製クリスマスケーキ販売中』の看板を抱えたサンタとトナカイが現れたのだ。
正確には着ぐるみだが。

「聞こえなかったのか。俺の行く手を阻むなと言っているんだ。店側に文句を言うぞ」

そのサンタとトナカイは、まるで通せんぼをするようにルルーシュの前に立っているのだ。
奇妙な光景でもあるが、着ぐるみが言葉を発さないせいで、余計に不気味さが際立っていた。

「ええい!!急いでいるんだ。そこをどけ貴様ら!!」

とうとう堪忍袋の緒が切れたルルーシュは、通り全体に響き渡るぐらいの大声でサンタとトナカイを怒鳴りつけた。
横を通る子供が泣いていたのには、少々心を痛めるが、愛する家族のためだ。ルルーシュは引かなかった。

「……ごめんごめん。悪気はなかったんだって」

あまりのルルーシュの怒り様に、固まっていた着ぐるみ二人組だったが、先にトナカイがその頭を外した。

「ジノ……お前だったのか……ってことは、そっちのサンタはまさか……」

ジノは汗で張り付いた前髪を直しながら、ルルーシュに笑いかけた。
ルルーシュがじろっとサンタを睨むと、サンタもおずおずと頭を外した。

「やはりお前か……」

「ごめんってば。ちょっと驚かそうとしただけなのに……」

サンタの頭を脇に抱え、少年は頬を膨らませルルーシュを見た。

「ふざけるな。俺は急いでいるんだ。お前らに付き合っている暇はない。それよりも何だ?その不気味な仮装は……」

ルルーシュは腕を組み、呆れてものも言えないといった風に彼ら二人の格好を見やった。

「ケーキ屋のバイトなんだ。可愛いだろ?」

「気色悪い」

看板を見せながらジノが言うと、ルルーシュはその言葉を切り捨てた。

「良かったらルルーシュも一つ買ってかない?今なら俺たち二人が付いてくる」

「全力で断る」

それじゃと手を振り、その場から立ち去ろうとしたルルーシュだったが、ふいに立ち止まり、もう一度二人を見た。

「お前たち今日は、」

「兄さーん」

その時ルルーシュの言葉を遮る声が響いた。
声のした方を見ると車椅子の少女と、それを押しながら走ってくる少年の姿があった。

「ナナリー!!ロロッ!!」

ルルーシュは着ぐるみ二人組を無視し、慌てて愛する妹と弟の元へと駆け寄った。

「何をしてるんだ。危ないから来るなと言ったのに……」

ルルーシュが眉尻を下げ、困ったように窘めると二人はしゅんとしながら謝った。

「ごめんね、兄さん。でもどうしても来たいってナナリーが………」

「だって、お兄様だけで買出しは大変かと思って。だから私たち二人お手伝いしたかったんです」

俯きながら言い訳をする二人を見て、ルルーシュは優しく微笑んだ。

「ありがとう。じゃあ、久しぶりに三人で買い物しようか」

頭を撫でられ少し頬を染める二人の姿はとても微笑ましかった。
ルルーシュは車椅子を押すロロの横に立ち、もう一度ゆっくりと歩き始めた。

「で、お前たち。今日はバイト何時までだ?」

相変わらずサンタとトナカイの頭を脇に抱えたままの二人に、ルルーシュは尋ねた。

「えっと…確か五時だったかな?」

「よし。なら、終わった後うちに来い。世界で一番美味しいクリスマスケーキを食わせてやる」

得意気に微笑むルルーシュに、ジノは思いっきり飛びついた。

「わぁーい。ありがとールルーシュ!!!」

「ばっ、ばかジノ!!お前その格好、く、くるしい……」

ジノの腕をバシバシ叩きながら、ルルーシュは呻いた。
ルルーシュが横目で、隣の少年を見ると、少年はただ微笑んでいるだけだった。
ジノから解放され、ルルーシュは一度大きく息を吸い込んだ。

「アーニャもカレンもみんな来る。パーティーは大勢の方が楽しいだろ?」

ルルーシュは翡翠の瞳の少年の頬に、そっと手を添えた。

「な、スザク。お前も来てくれるんだろう?」

「もちろんだよ。ルルーシュ」

だって、ほら。
僕たち本当の友達じゃないか。





「全くあいつらめ。世界の理まで変えてしまって…」

天界では一人緑髪の少女が、下界の様子を窺っていた。

「神の願いを叶えるか……大それたことだが、案外簡単なことなのかもしれないな」

何故なら、人も神も願うことはいつもたった一つのことで―――






『みんなが笑って過ごせる世界を』







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