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GEASS
次週に期待
執事ルルーシュと坊っちゃんスザク。
親子と制服の話。






顔は強面だが性格はひどく陽気だ。その息子とはまるで逆。
誰の話かって?俺の本当の主人の話だ。

「どうかな?ルルーシュくん。ここでの生活はもう慣れたかい?」

「はい。お陰様で」

この人に会うのは今日で二度目。最初は俺がこの家の前に倒れていた時。それ以降は、社長はずっと出張で出掛けていたため会うことはなかった。

「それは良かった。スザクとは仲良くやってるようで安心したよ。この前は学校にも行ってもらって悪かったね」

「あぁ…あのことですか」

すっかり忘れようとしていた記憶が蘇る。

「どうだい?スザクは学校で上手くやっていそうかい?」

話しやすいし、存外優しい人物なのだが、多少親馬鹿が過ぎるのがこの人の弱さ……いやある意味人間らしさなのかもしれない。だんだんと慣れてはきたが、父親から息子への愛情なぞ知らぬ自分には未だに理解不能だ。
とは言え、それは俺の主観。この人はただ単純に一人息子が大好きなのだ。つまり学校でのあいつの一匹狼っぷりを知らせる訳にはいかない。
「仲の良いご友人もいらっしゃるようでしたよ」

笑顔でそう言った。もちろん俺の脳裏にはあの金髪碧眼の姿が浮かんだのだが、そんなことスザクに言ったら卒倒するかもしれない。

「それは安心した。エスカレーター校に高校からの入学だったからね。もしかしたら一人で拗ねているんじゃないかと思っていたんだよ」

ご名答。思わず手を叩きそうになったのを慌てて引っ込める。
何だ。意外と息子のことちゃんと見ていたんだな。

「明るい雰囲気でしたし、警備もしっかりしていて良い学校でしたよ」

「そうか。なら安心して通わせられるな」

ニコリと社長が微笑んだ。

「……通わせられる?」

「あぁ。通わせられる」

「……社長。それではまるでこれから誰かをあの学校に通わせるみたいですよ」

「最初からそのつもりだったんだけどね」

その時後ろでドアの開く音がした。慌てて振り返るとそこには見たことのある制服を抱えたC.C.が立っていた。

「君にもあの学校に通ってもらおうと思ってね」

「はぁ……えっ!?……はぁあぁああぁ!?」

屋敷に俺の叫びがこだましたそうな。






「社長はお前のことも実の息子のように思っているんだ」

社長が急な呼び出しとかで会社に向かった後、俺はC.C.に渡された制服を抱え項垂れていた。

「だからって……」

「良いじゃないか。社長はよく言ってるぞ。お前にも本当の息子の様に接して欲しいと」

「だからって……」

「たまには良いじゃないか。人に甘えることも大切だぞ。お前はいつも気を張りすぎているからな」

「だから……!!それだったらなんで制服が女モノなんだっ!!」

俺の言葉にニヤリとC.C.が憎たらしく笑う。

「女子なら編入させられるが、男子は人数の関係上無理なんだそうだ」

「そんな少女漫画みたいな展開があるかッ!!」

「残念だったな。この話はそこらの下手な少女漫画よりもっとベタな展開を突き進むというのがコンセプトだ」

「何の話をしている?」

女子生徒の制服に触るのなんてナナリーの以来だ。相変わらず短く作られているスカートに嘆息する。

「男子生徒が間に合っているのなら俺が無理に編入する必要なんてないだろう。何で社長はそこまでして……」

「だから何度も言っている。お前のことを実の息子の様に思っているからだ」

実の息子だから大切にしたい。きちんとした教育を受けさせてあげたい。友達を増やして普通の子供と同じ生活をさせてやりたい。そう思う父親の気持ちが分からんのかこの馬鹿者がー!!
と無駄な大声で叫ぶC.C.に冷めた視線を送る。

「……まぁ、つまり面白半分という訳だな」

「馬鹿め。面白100%だ!!」

親指を立てサムアップのポーズを取るC.C.の顔面に俺は思いっきり制服を投げつけた。






脱兎の如く部屋を飛び出したは良いが、まぁ、そこはアレだ。すぐにたまたま歩いていた沙世子さんに捕まった。

「廊下に急に飛び出したら危ないですよ。執事失格です」

「執事なぞ失格で構わない!!それよりも俺は俺の男としての尊厳をッ!!」

「よくやったな、沙世子。じゃあ次はルルーシュにこの制服を着せてくれ」

「あら……まぁ……かしこまりましたわ」

「嬉しそうに微笑むなッ!!」

「だって楽しそうじゃありません?」

「何処がだッ!!」

「ではまず上からだな。仕方無い。自分でお着替えも出来ないルルーシュくんの為に私が一肌脱いでやろう」

「では、私は押さえ付けていればいいですか?」

「お前ら人の話を聞けぇえぇええぇぇ!!!!」






「ただいまぁ〜」

いつも真っ先に出迎えてくれるはずのルルーシュの仏頂面が今日はない。
朝、喧嘩した訳でもないのにどうしたのだろう。淋しい気持ちと不安な気持ちが入り交じる。
その時、

「誰がヅラなんぞ被るか-!!」

「違う!!これはウィッグだ!!」

「同じだろう!?」

ルルーシュとC.C.の奇妙な叫び声と共に、階段を駆け下りてくる足音が玄関ホールに響いた。
また何をじゃれ合っているんだかと一つため息を吐いてから、前へと向き直った僕は目を丸くした。
いつもの見慣れた彼のはずが、なんと自分の学校の女子の制服に身を包んでいる。
驚きで彼から目を離せないでいると、当然彼とも視線が交差する。

「スッ、スザク……!!」

あぁやはりいつもの彼かと声を聞いて安心する。だが彼は僕の存在に気付いた瞬間、顔を赤くさせたり青くさせたり忙しそうだ。

「ルルーシュ……だよね?」

一応聞いてみるとこれ見よがしに舌打ちされた。

「あぁ……そうだ」

彼は頭上にいるであろうC.C.を睨むがどうやらその姿はもう見えないらしい。

「どうしたの?その格好」

「好きでしてるように見えるか?」

長めの紺のカーディガンにチェックのスカート。ごく普通の制服のはずなのに、モデル並にスタイルの良い彼が着るとまるで違う服に見える。
短いスカートから覗く生足がまた扇情的で……まずい。
見たい気持ちと見れば見るほど歯止めが効かなくなりそうな恐ろしさで心がない交ぜになる。

「ったく、女子の気持ちは本当に理解不能だ。こんな短いスカートを好んで履く意味が分からない」

くるっと彼が後ろへ回った瞬間、スカートが風でフワリと上がった。カーディガンで押さえられている分見えるのは本当にギリギリで……またそのギリギリ感が堪らない。

「あっ、ゴミ落ちてる」

「あっ……」

屈んだ瞬間、うん。まぁ、ばっちり見えるよね。だってまさか下着まで女モノなんて誰も思わないだろ?

「………白レース」

「見、見たなぁあぁああぁ!?」

平手打ちの渇いた音が響いたそうな。







「ねぇー今日転校生来るって知ってたー!?」

「知ってた」

「ねぇー何で今日スザク左の頬っぺた腫れてるのー?」

「黙れ。うっさいわハゲ」

禿げてないよーと一人でわいわい騒いでいる無駄に背の高いクラスメイトを睨み付ける。
転校生だと?知るかそんなもん。
僕にはそんなことより、昨日から喧嘩しっぱなしで口を聞いてもらえていないルルーシュのことの方がよっぽど最重要事項だ。家に帰る前にお土産を買って帰ろう。何か甘いもの。彼が好きそうな甘いもの。
そんなことを考えているといつの間にかチャイムが鳴っていたらしく、生徒はみんな席についていた。だが噂の転校生が気になるのか、何処か浮き足立っているようにも見える。お前ら小学生か。
担任のヴィレッタ先生が漸くやって来て、一通りの挨拶を済ませる。

「話は多分何処からか漏れてると思うが、今日うちのクラスに転校生が来る」

待ってましたとばかりに教室がざわつく。確かに幼稚園からエスカレーター制のこの学校では、僕のような外部からの入学生だって珍しいんだ。ましてやこんな変な時期に転校してくる奴なんてもっと物珍しいだろう。だからって何だこの異様な盛り上がりは。

「じゃあ入って来て良いぞ」

先生が廊下に向かって声を掛ける。
入って来たのは、ショートカットの女の子。遠目でも美人だということが分かる。短いスカートからはその細く長い足がしなやかに伸びている。艶やかな黒髪には天使の輪、白磁のような肌は透き通りそうだ。そして最も印象的なのが、紫水晶の様な大きな瞳。

「枢木ルルーシュです」

「………………」

「枢木の従姉妹なんだよな。みんな仲良くしろよ」

「よろしくお願いします」

にっこりと僕には見せたことのない笑顔で挨拶をする。

「………………」

「席はちょうど枢木の隣が空いているからそこでいいな」

「はい」

………待って。待って!待ってくれ!!
状況が全く読めない。
ルルーシュが女子として転校してきて、しかも従姉妹!?安い恋愛シュミレーションゲームじゃあるまいし!!何なのこの展開!?

「久しぶりだね、スザク」

いつの間にか僕の眼前には、すっかり僕の《従姉妹》に成りきっているルルーシュが。

「えっ、だから……ちょっ、待っ……はぁあぁああぁあぁ!?」

(いや、反応遅すぎだろう)


ルルーシュが女の子!?しかも転校生!?
どうするスザク!?
そして次回二人の関係も急展開!?
次号巻頭カラーで堂々登場!!






Title by "207β"

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