REBORN
どらまちっくちっく (山ヒバ)
暑い。暑い。暑い。
地球温暖化?そんなの僕には関係ないよね?
そんな勝手なこと言われたって納得できないし。
どうにかしろよ、気象庁。
僕は今非常にイライラしている。
この暑い夏休み、わざわざ学校に出向いて風紀の仕事をしているなんて、正に学生の鏡。
それなのに夏休みということもあって、ココ応接室も古めかしい扇風機しか置かれていない。
信じられない。この僕にだらだらと汚らしく汗をかけと?そんなの耐えられない。
カキーン!!!ワァァァァァァァァ!!!!
校庭から大きな声がしたので、窓の外に目をやってみる。
野球部だ。よくこの暑い中部活なんてやってられるよね。
今打った少年がヘルメットを取ると、短い黒髪が現れた。
あ、あいつだ。やっぱり。
フッとそいつがこちらに目を向けた。
すると目が…多分合って、微笑まれた…気がした。
僕は慌ててカーテンを閉め、机に向かって書類整理の続きを始めた。
…見られた。あの時絶対僕のこと見た。
もし僕がずっとあいつを見ていたなんて思われたら、恥ずかしすぎて死ねる。
というより…なんで僕…こんな心臓ばくば……
「ひーばーりー!!!」
大声と共に応接室の扉が勢いよく開かれた。
そこには泥と汗まみれのユニフォームを着た山本武がいた。
「な…何?ノックしてから入るのが常識じゃない?」
「いやぁ、ヒバリがまさか今日みたいなクソ暑い日まで学校来てるなんて思わなかったからさ。嬉しくって飛んで来ちまった」
うっ…なんでこいつこんな笑顔がキラキラしてんの?いやに眩しいんだけど。
「僕も君たちがこんな暑い日まで部活をやっているなんて思わなかったよ」
「あっ、やっぱ俺たちが練習してんの見ててくれたんだ!?」
「べ、別に見てないって!!たまたま!!暑いから窓開けようと思っただけ!!」
「そうなの?俺てっきりヒバリが見ててくれたもんだと思ってたんだけどなぁ…だって目ぇ合ったし」
「合ってない。思い込み」
「あーヒバリは恥ずかしがり屋なのなー」
「黙らないと、咬み殺すよ」
「わぁーったって。でもヒバリに俺の野球してるとこ、ちゃんと見て欲しかったのにな」
「……?なんで?これからは続けないの?」
「あぁ…続けたいけどな…」
きっと赤ん坊絡みのことでいろいろあるんだろう。
…こいつ、馬鹿に見えてもちゃんと将来のこと、考えてるんじゃないか。
「…じゃあ…もし君が甲子園に行けたら見に行ってあげる」
「え!?マジ!?」
「僕は嘘も冗談も言わないよ」
「じゃあ約束な!!」
「うん…だから…それまでは絶対全力で続けてよ。君にはこれしかないんだから」
「…ヒバリ…俺、感動した。抱きしめていい?」
「馬鹿じゃないの?それより僕、喉渇いてるんだけど」
「わかった!!じゃあ俺が牛乳奢ってやるよ。ヒバリはもっと栄養取らなきゃ」
そう言って山本は僕の手を強く握りしめ歩き出した。
どうか彼の笑顔が永遠に消えませんように。
どうかこの小さな約束が破れることのないように。
そんな願いを込めて、僕はゆっくりと彼の手を握り返した。
「へへ。校内デート」
「そういう風紀を乱す発言するなら今すぐ咬み殺すよ」
「…はい。すみません」
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