REBORN
星に願いを (骸ヒバ)
7月7日。
世間が七夕という年中行事に浮き足立つ日。
つまり、僕にはまったくもって関係ない日ということ。
「わかった?」
当たり前のように応接室に上がり込んできたパイナポーに尋ねる。
「クフフ…でも今から関係することになりますから!」
無駄に爽やかな笑顔。
…何なの?こいつ。人の話聞いてる?
「とりあえず早く書いて吊るしましょう!」
「吊るす?何を?あぁ君を?吊るし首なんて随分と古風だけど、たまには面白そうだね」
「ちっっっがいますよ!!短冊ですよ!た・ん・ざ・く。ほら、七夕の時には願い事を短冊に書いて笹に吊るすのが日本の風習なんですよね?僕一度やってみたかったんですよ!!」
そう嬉々とした風に奴は言い、パチンと指を鳴らすとドアが開き巨大な笹を持った城島と柿本が現れた。
またパシリに使われてる…可哀相に。
「僕が笹を持参したので、もう安心ですよ!ね?雲雀君。クフフ」
持参したのはお前じゃないだろう。まぁいいか。
「君がイタリア人だってことを忘れそうだよ」
「えー!!僕はれっきとしたイタリア人ですよ」
「……あぁ…無駄に日本文化フリークなトコとか外人ぽいよね。ディーノともあの不良ともなんか似てるし(空気読めないトコとか自分勝手なトコとか)」
「僕の何処があのハゲ馬とストーキン・ボムに似てるんですか!?心外です!!」
ほら、自分で自分が見えてないトコとかね。もうそっくり。
「あの、骸さん…とりあえずコレどうすれば?」
柿本がようやく口を開いた。確かにいつまでもそんな巨大な笹を抱えてるわけにはいかないだろう。
「あぁ、じゃあその窓の辺りにでも立てかけておいて。邪魔だから」
仕方なく僕が指示を出す。
「なんか、雲雀君て…千種に優しいですよね」
「そう?」
「ねー骸さぁん!早く俺七夕やってみたいれす!!」
城島は相変わらず子供っぽい。
そしてコイツのこの一言で僕らは短冊に願い事を書くはめになった。
「雲雀君はなんて書いたんですか?」
骸が僕の手元を覗き込んできた。残念なことに僕は何も書いてなかったんだけど。
「僕に願うことなんてないし。全部自力でやるから」
「淋しいなぁお前」
そこですかさず城島がちゃちゃを入れた。キャンキャンキャンキャンまるで本物の犬みたいだ。
「うるさいよ子犬。じゃあ欲しいもの書いとく」
「えっ!?何が欲しいんですか?僕が渡せるものならなんでも差し上げますよ!!」
「金」
と言いながら、でかでかと『金』と書かれた短冊を骸に見せ付けた。
「…それは…額によりますよね」
骸の頬を冷や汗が伝った。こいつのうろたえる様を見るのは、可笑しくて仕方ない。
「そういう骸さんはなんて書いたんですか?」
嬉々とした表情で城島が尋ねる。哀しいことに耳と尻尾が見えてきた。
「クフフ知りたいですか?知りたいですよね!?僕は『一生雲雀君と供にあれますように』と!!」
「黙れ。腐れパイナポー。僕は南国に行くつもりなんてないから」
僕と骸の間の絶望的な温度差を無視して、城島は喋り続ける。
「骸さん!!骸さん!!俺は『美味しいものいっぱい食べられますように』って書きましたよ!!」
「別に…どうでもいいですよ…そんなことは」
落ち込みすぎて、パイナッポーに黴でも生えてきそうだ。でもそんなこと僕にはどうでもいい。
「柿本は?なんて書いたの?」
一言も発さない柿本が気になって、声をかけた。というより、この2人の相手をするのが疲れただけなんだけど。
「『周りがもっと成長してくれますように』って」
「やっぱりまともなのは君だけみたいだね」
思わずホっとした。
そこへコンコンとドアを静かにノックする音と共に、聞き慣れた間の抜けている声が聞こえた。
「ヒバリさぁ〜ん。いますかぁ?」
「あっ、沢田だ」
「えっ?何故ボンゴレがココに!?」
そう言ったかと思うと、骸はありえないスピードで廊下に出て沢田を威嚇しに行った。
廊下から聞こえてくる沢田の叫びはとりあえず無視することにした。
ふぅ。漸く一息つける。
「願い事ぐらい、素直に言ってあげればいいのに」
柿本がボソリと呟いた。
…多分、こいつは僕が本当に望んでることに気付いてる。
「そんなことしたら調子乗るし、うるさいし、面倒でしょ?いいの。このままで」
フフっと笑うと、柿本も少し笑いながら
「確かに」
と言った。
彼らが帰った後、僕は応接室で一枚のきらびやかな短冊を目の前にしていた。ペンをとり、書いてはみたが…ひどく恥ずかしい。
「僕にこんなことさせるなんて!!ただじゃおかない!!バカナッポー!!」
『どうかあいつの願いが叶いますように』
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