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REBORN
僕らは一人では生きてゆけないから (骸ツナ)






人生で最良の日に、俺は、人生において最も大切な人を失った。




聞けないと思っていた声が聞こえた。刺々しい彼らしい、声。

「おめでとうございます。ボンゴレ」

「ありがとう、骸」

今日は俺と京子ちゃんとの結婚式。
骸は最初こそ来るのを拒んでいたが、リボーンに守護者は必ず来るようにときつく言われ、しぶしぶ来たらしい。

「来て、くれたんだね」

「仕方なくです」

顔に張り付いている笑顔と、きつい口調がすごく不釣合いで、本当に怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。

「どうして僕がこんな所に…」

「それは君が俺の守護者だから」

「それだけ…ですか?」

分かってる。本当は分かってるんだ。
こいつは、俺のことが好きだった。
多分…俺も…そう、だった。

「クフフッ」

と骸が今日始めて笑った。
俺が難しい顔をしているのが相当面白かったらしい。

「何?」

「いや…本当にいつまでも甘い男だな、と」

「うるさいな」

「でもまぁ…僕は君と違って甘い男じゃないので、もう平気な顔して君の隣にはいられません」

「え?」

「今すぐにでも連れ去りたい気分なんです」

「………」

「離れましょう。もう僕は君の傍には現れません。安心して下さい。君を惑わすことも無ければ、君らのことを引き裂くつもりもありません」

「む、くろ?」

お前ってそんな奴だったか?
欲しいものは力付くでも手に入れようとする奴だろう?
それが何でよりによってこんな時に、諦めが早いんだ?

「さようなら、ボンゴレ。お幸せに」

風が吹いたと思った瞬間、その場から、骸の姿が消えた。
本当の想いを伝えられないまま。感謝の言葉も言えないまま。
最後の哀しく泣きそうな骸の微笑みだけが、俺の脳裏に焼きついて離れなかった。




あれから10年。
俺はボンゴレのボスとして、自分としてもすごく成長したと思う。
ボスとしての自覚が出て来たって言うのかな?

「おい、ツナ。暇だったらあそこのカフェのコーヒー買って来い」

「ちょっと待て、リボーン。俺、これでもボスなんだけど」

そうは言っても行くしかない。相手はあの最強家庭教師だ。仕方なく、俺は街へと出かけた。街はひどく混雑していて前へ進むのもやっとだった。
しかし、その中で一際目をひく髪型が。

「…む、くろ?」

俺が、あいつを見間違えるはずがない。

「骸!?骸っ!!骸っ!!」

俺は必死で叫んだ。
それでも俺の言葉はあいつには届かない。

「むくろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

俺は声が枯れるまで叫んで、叫んで、叫び続けた。
…でも、ダメだった。
俺が捨てたのに。まだ縋ろうだなんて…虫が良すぎたんだ。

「ごめん…骸…俺もお前のこと、好きだったんだ」

声が震えた。
初めて口にした10年越しのこの想い。
素直になるにはもう遅すぎる。何もかも手遅れだ。

「…もっと早く教えて下されば良かったのに」

待ち焦がれた声が聞こえて、我慢していた涙がどんどん零れ落ちてしまった。

「む、くろ?」

「はい。そうですけど?」

「な…なんで?」

未だに状況が上手く理解できない俺が、何とか脳を回転させて言葉を搾り出す。疑問系しか浮かばなかったけど。
骸は顔を紅くさせながら、こう答えた。

「正直に言うと…君の傍を離れられなかったんです。もう君無しでは生きていけないみたいですね、僕は」

あぁ…俺もだよ。 
俺は目の前にいる、愛しい人に抱きついた。
もう決して離さない。離れない。

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